読書生活 

本もときどき読みます

秀吉と継之助と土方 歴史物が好きなわけ 

 歴史物が私は好きです。

 最初は面倒で分からない点もありますが、読み進めるうちに粛然としてそこに人物を見つけることがあります。その瞬間が楽しみで仕方がありません。「粛然と人物を見つける」というのは、「知っている」とか「覚えている」とか、そういうものではなく、いろいろな知識や背景を知るにつれ(虚構モノも多分に含まれているとは思いますが)、その人物が私の頭の中で人格として登場するとでもいうのか、そういう感じです。その人物が、いきいきと本の中から躍り出てきます。その人物や人生を様々に想像しつつ読みすすめ、また、関連した本を読みその人物の肉付けをするうちに、まるで彼らは、私の友人や先生のような相貌を帯びて、私の横に座ってくれます。もうそれだけで、この瞬間、跳び上がるような喜びを味わえます。やっと出てきてくれたか、と思います。さらに肉付けするために読み進めていると、もうその人物は、私にとって現実の人間以上に現実的になります。

 私の中には、秀吉と継之助と土方がいます。もちろん、世の中には私よりこのお三方を知っている人、それこそ星の数ほどいると思います。しかし、私よりこの三人を自分のうちに住まわせている人はそれほどいないと思います。私の知識は偏ったものかもしれませんし、自分で想像しているうちに物語を勝手に盛ってしまうこともあるので、史実と違った人物になっているかもしれません。でも、それでもいいと思っています。試験で点を取るための読書ではありませんから。

 彼らは、時に実在の友人以上に私を支え、行くべき道を指し示してくれます。何かにぶつかるたびに、彼らは私にささやきます。「おい、おまえ、それでいいのか」と。

 それが、私が歴史物を読む理由です。