読書生活 

本もときどき読みます

『脳科学者の母が、認知症になる』は、脳科学の理論と介護実践の融合したアルツハイマーの骨太書。

「現役の脳科学者が、認知症になった母を介護する」話です。 認知症になったのは元脳科学者のおばあちゃんなのか、それとも現役の脳科学者のお母さんなのか、この題名では判断がつきません。 バリバリ活躍していた脳科学者が、アルツハイマーの進行とともに…

『滑走路』 「平成を知りたかったら彼を読め」のちにそう呼ばれる歌人、萩原慎一郎の最初で最後の歌集

平成も残すところ2年弱という2017年6月、1人の歌人がこの世を去りました。名前を萩原慎一郎といいます。 有名私立中高一貫校でいじめを受け、歌人を志すも非正規として働き、32歳で自ら命を絶ちました。彼の死の半年後、歌集「滑走路」が発表されました。…

「おまえらみたいな奴らが子育てしてっから、ロクな大人が育たねえんだよ」

先週、先々週と続いた怒濤の仕事ラッシュがようやく終わり、わたしの業務はいつもの開店休業状態に戻りました。本屋に無目的によりだらだら立ち読みする。至福の時間ですね。 するとだ。隣で声がする。この文章のお題にもした、なかなかシャープな一言。 電…

自殺したら負けとか自殺する奴は弱いとか言うのはもうやめませんか。

今回は、引用ばかりの記事です。 松ちゃんのワイドナショーでの発言について 昔からある「自殺したら負け」の考え方 松ちゃんのワイドナショーでの発言について リアルタイムで見てた時から気にはなってました。数時間後からネットがざわついてます。知らな…

『人魚の眠る家』東野圭吾 ネタバレなしの感想。

『人魚の眠る家』 あらすじ 『人魚の眠る家』 感想 映画化するとのこと。子ども役が重要なのでは? 『人魚の眠る家』 あらすじ 娘がプール事故で脳死状態となる。臓器を提供する意思を問われ悩む両親。思案の末、臓器移植を受け入れる決断をする。ところが、…

『事故物件怪談 恐い間取り』は近年まれに見る正統派怪談だった。

『事故物件怪談 恐い間取り』を読んだ。 事故物件とは、住人が変死を遂げた「いわくつき」の賃貸物件のことを指すそう。この本は、事故物件をあえて選んで住むという変わった癖をもつ芸人「松原タニシ」さんのルポとなっています。 テレビ番組の企画として事…

凄本小説を感領本(感覚を領される本)と、とりあえず呼ぶことにする。『街場の読書論』内田樹

おもしろい小説のことを何と言おうかな、と考えてた 「読書の効用」とネットで調べると、語彙力のアップや知識を増やすことなどがあげられています。勉強のためだったり、暇つぶしだったり、本のページを開くことが純粋に好きだったり、本を読む理由は人それ…

インプットとアウトプットのバランスは?

『アウトプット大全』書評 『アウトプット大全』書評 成長はアウトプットの量で決まる。 インプットとアウトプットの黄金比は3:7 『アウトプット大全』という本を読みました。啓発本?ハウツー本?の一つですが、中年が読むとざわざわするくらいおもしろ…

数学の神はわたしに微笑むどころか尻を向けている。『フェルマーの最終定理』

『フェルマーの最終定理』という数学の話を読みました。積ん読どころか積まれていることすら忘れてました。「慶応大の院生が新しい三角形の定理を証明した」という記事を新聞で読み、その記事の中にこの『フェルマーの最終定理』が出てきたので、確かあった…

子どもの前でおろおろする先生が好き。『二十四の瞳』

二十四の瞳に出てくる大石先生が好き ちょっと前にこういう記事を書きました。 www.yama-mikasa.com 体罰するな、人を殴るな、という内容です。 二十四の瞳っていう本があります。この話に大石先生という方が出てきます。女学校を出たばかりの若い先生で、教…

老後どころか今もありませんけどね。『老後の資金がありません』感想。

「ライフプラン」研修会にて 先日、40半ばの社員が集められて、「ライフプラン」なるお題の講習を受けました。一人一人にタブレットが渡されて、そこに家族構成や世帯収入などの基本データを入力した後、「車は何年に一度買い替えるつもりか」「子どもの結婚…

『黒書院の六兵衛』浅田次郎 正体とかそういうのあまり考えない方がいいよ。

おもしろい小説を久しぶりに読みました。浅田次郎の『黒書院の六兵衛』です。 あらすじ 城内になぜか居座る男 的矢六兵衛 的矢六兵衛 あんたは一体誰? あらすじ あらすじは簡単です。上巻の背表紙より。 江戸城明け渡し迫る中、開城のため、官軍のにわか先…

戦争文学を読んでみた。小説『野火』大岡昇平 感想

『野火』持ってますけど買い直して再読。 『野火』…家にありますが、買い直しました。 終戦記念日に近いこの時期、テレビでは戦争をあまり取り上げなくなりました。意外と出版社はがんばっているようで、本屋には戦争文学が並びます。応援する気持ちを込めて…

顔を焼いてまで逃げた高野長英。『長英逃亡』吉村昭

逃げる長英、追う幕府 切放しとは 硝石精で顔を焼く 逃げる長英、追う幕府 吉村昭の『長英逃亡』を久しぶりに読みました。日本有数の蘭学者である高野長英の6年4か月にわたる緊迫した逃亡劇が、緻密に描かれています。 江戸末期、鳴滝塾のエースとして活躍…

猫の交尾は正常位なのだ。梶井基次郎『交尾』のススメ。

猫のまぐわい 真夏のような暑さの中、うちの近所は恋の季節のようです。といっても、人間ではなく地域猫の話。23時、ワールドカップの試合が始まるころ、うちの家のまわりでも猫たちによる負けられない戦いが始まります。 フギャー!フギャ―!シャー!フギ…

司馬遼太郎と織田信長 司馬作品に出てくる織田信長の書かれ方から見える司馬史観

司馬遼太郎の作品には、『国盗り物語』や『太閤記』など織田信長が出てくるモノが多いです。それらの作品を読めば、うっすらと司馬遼太郎の織田信長観が読み取れます。『司馬遼太郎の考えたこと』や『この国のかたち』などのエッセイには、『国盗り~』など…

梶井基次郎のゴリラ顔について。少年の日の思い出。

『汚れちまった悲しみに』 今から30年前、中学の同じクラスにイケすかない奴がいました。文学少女を気取っていて、いつも机の上に何らかの文庫本をカバーもかけずに置いていました。よく置いてあったのが、中原中也の詩集『汚れちまった悲しみに』です。 …

梶井基次郎と猫

猫の肉球に魅せられて うちに猫が来てからもうすぐ半年になります。 www.yama-mikasa.com 猫は美しい。1日見ていても飽きません。丸みを帯びた流線型のフォルムに、隙も無駄もない香箱スタイル。整った顔立ちに滑らかな尻尾。うーん、たまらん。 中でも肉球…

『光る壁画』吉村昭 小田原に家があるのに渋谷に単身赴任して奥さんをキレさせる男の話

吉村昭の『光る壁画』を読みました。世界初の胃カメラを開発した日本人の物語です。この物語の主人公、曾根菊男さんの単身赴任生活の苦悩がとてもおもしろい。 昭和25年頃の話です。菊男さん(28)は胃カメラ開発の研究員として渋谷で働いています。妻の…

【10問】 全部読めたら書店員?読書好きしか正解できない漢字クイズ 

文豪の作品の中から難易度の高い漢字を拾いました。お暇なときにどうぞ。答えは記事の最後にあります。 1 森鴎外:1862 - 1922 2 水上勉:1919- 2004 3 司馬遼太郎:1923-1996 4 川端康成:1899-1972 5 夏目漱石:1867-1916 6 藤沢周平:1927-1997 7 …

司馬遼太郎は徳川家康をどう評価していたのか。

司馬遼太郎の小説には、徳川家康がよく登場します。家康を主役として扱った「覇王の家」、ほぼ主役の「関ヶ原」、秀吉を語るに欠かせないので「新史太閤記」…。複数読めば、家康を通して司馬史観が透けて見えます。 高級官僚 徳川家康 家康の好み。家来の娘…

梅雨の表現。小説で使われている梅雨の表現を集めました。

梅雨のじめじめした感じを、太宰や漱石らがどう表現していたのか。梅雨の表現を小説から拾いました。随時更新していきます。 夏目漱石 三島由紀夫 梨木香歩 北村薫 藤沢周平 吉村昭 有吉佐和子 夏目漱石 梅雨に入って23日すさまじく降ったあげくなので、地面…

『かがみの孤城』の感想文 不登校児を勇気づける魅力的なファンタジー

かがみの孤城、500ページを越えるハードカバーで重さは514gで値段は約2000円。非力なわたしが気軽に持ち運びできる重さではなく、ヒラのサラリーマンが気軽に買える価格でもなく、いつも文庫のわたしがこの本を購入したのは、魔が差したとしか思…

謙遜や自虐もほどほどに 三島由紀夫『不道徳教育講座』

「俺、ハゲてるだろ?」ってはげてる人に言われたとします。どう答えますか? ①「そうですね」 ②「少し薄いけど、あまり気にすることないよ」 ③「年取ったらみんなそうなるって」 ④「そんなことないよ」 ⑤「どこが?ふさふさじゃん。毛量多すぎて佐藤浩一か…

本棚の整頓をした

本棚を整頓することに 先日、本棚の整頓をしました。高さもあって、福のよい遊び場となっていたのですが、この前の連休の夜、すごい音を立てて本が雪崩を起こしました。ドドドドドって。福は間一髪で難を逃れたのですが、何かあってはまずい、と、重い腰をあ…

飛脚と早籠と早馬、一番速いのはどれ?江戸の情報伝達手段について

飛脚、早駕籠、早馬、この3つの情報伝達手段の速さを比べてみました。 飛脚とは 早籠とは 早馬とは 飛脚と早籠と早馬、どれが一番速いのか? 飛脚とは 手紙を書いてそれを飛脚に渡す。すると、各宿場町に待機している飛脚がその手紙を受け取り、また次の宿…

司馬遼太郎が語る豊臣秀吉

選挙の神様 豊臣秀吉 応仁の乱がなければ秀吉の奇跡はなかった 大坂城は大きすぎた 秀頼は秀吉の子どもではなかった? どうして秀吉は明征伐を行ったのか? 軽度のパラノイア 秀吉が朝鮮国王に送った国書 秀吉の明征伐を無視し続けた徳川家康 司馬遼太郎作品…

運の引き寄せ方 『野村の悟り』野村克也

人格を備えている人間には、神様が味方してくれる 成績だけでなく 取り組む姿勢が真摯で、 みんなに尊敬される 人格を備えているから 神様が味方してくれる わたしには、「このピッチャーは本当に運がいい」と感じさせられたピッチャーがふたりいた。ひとり…

春の表現。文豪に学ぶ春の表現。

うららかな春。実際に文豪が小説で使った春の表現を集めました。随時更新しています。 有吉佐和子 司馬遼太郎 太宰治 谷崎潤一郎 夏目漱石 藤沢周平 三島由紀夫 水上勉 吉村昭 有吉佐和子 うららかな春であった。加恵は井戸端で濯ぎ洗いをしていた。のどかに…

司馬遼太郎の『新史 太閤記』にある柴田勝家のちょっといい話。

織田四天王 凄いんだぞ!柴田勝家 信長、秀吉、家康と比較され、案外あなどられがちな武将ですが(そんなことない?)、織田四天王の一人に数えられるほどの有能な武将です。ほんとは凄いんだぞ。 秀吉とはうまが合いませんでしたが、秀吉は織田家の家老とし…