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「さまよう刃」 東野圭吾

 強姦 許せない犯罪

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 長峰の一人娘、絵摩(15)が行方不明となります。数日後、荒川で死体となって発見されます。花火大会の帰りに、未成年の少年グループによって蹂躙された末の遺棄でした。何者か(共犯者)から密告電話がかかってきます。

実行犯は二人、名前は「スガノカイジ」と「トモザキアツヤ」

その電話により、犯人の一人の住所を知り、その住所に向かいます。その部屋に行くと鍵が開いています。

 その部屋の中で、娘が蹂躙される動画を目にしてしまいます。そこに帰ってきた一人の少年が「トモザキアツヤ」であることが分かり、殺害します。

 まだ、終わりじゃない。

警察に「復讐させてほしい」と告げ、父は単身「スガノカイジ」を探す旅に出ます。

 

犯行前の少年たち

手加減するなよ。もう二度と逆らわないって思わせるくらいにやるんだ。中途半端なことをしたら、警察に言いやがるからな。ふつうじゃめったにやらせねえようなのを狙うんだ。そういうのを調教すんだよ。デジカメもビデオを完璧。おい、あれ浴衣か。いいじゃねえか。いいじゃねえか、最高だ。抱きてえ。 

 

動画を見る父

たとえ何が映っていても、目をそらしてはならない。呼吸を二度三度繰り返した後、彼は再生ボタンを押した。~絵摩は全裸だった。膝をついた姿勢で、男に頭を押さえつけられ、無理矢理に奉仕させられているのだった。抵抗している気配はない。誰かが笑っていた。~妻の形見であり、自分の命よりも大切にしてきた、この世でたった一つの宝物を、鬼畜としかいいようのない人間のクズたちに蹂躙されたのかと思うと、気が狂いそうになった。~ぐったりと動かなくなった絵摩の顔を一方の男が叩いている。カメラで撮っている男は笑っている。なんだよ寝ちまったのか~

 

少年犯罪について語る刑事

自首してきたのは、遊び仲間の四人組だった。親に連れられてよ。殊勝な顔してきやがった。泣いているんだけどさ、それは被害者に対して申し訳ないっていう気持ちじゃないんだ。警察に逮捕されなきゃならないっていう状況を嘆いてるだけなんだ。自分のことをかわいそうだと思ってやがったんだよ。

 

 少年の一人を殺した後の長峰

刺しながら涙を流していた。殺したところで、死体を切り刻んだところで、娘を奪われた恨みの一万分の一も晴れなかった。悲しみが和らぐこともなかった。では生かして反省させれば、それが少しでも果たせるのか。こんな人間の屑どもが反省などするものか。反省したところで許せはしない。そもそも、あんな非道をした者が、たとえ刑務所のなかであろうと、今後も人間として生きるのだと思うと、とても耐えられない。

 

長峰が、トモザキを殺害後、警察に送った速達

トモザキアツヤを殺したのは私です。動機は娘の復讐です。絵摩はかけがえのない宝でした。そんな何物にも代え難い宝を、トモザキアツヤは私から奪いました。しかも、そのやり方は、残忍で、狂気に満ちたもので、人間性のかけらさえ感じることができません。私の娘を、まるで家畜のように、いいえ、それ以下の、ただの肉の塊として扱ったのです。~彼を殺したことを、私は少しも後悔していません。恨みは晴れませんが、もし何もしなければ、もっと悔いることになっただろうと思います。トモザキは未成年です。弁護士の主張次第では、刑罰とはとてもいえないような判決が下される恐れがあります。事件の前ならば、私もそうした意見に同意したかもしれません。でも、今の考えは違います。こんな目にあって、私はようやく知りました。もちろん、どういう理由があろうとも、人を殺せば罰せられることはわかっております。すでに私はその覚悟ができています。しかし、今はまだ逮捕されるわけにはいきません。復讐すべき人間はもう一人いるからです。私は何があっても復讐を果たします。それまでは捕まらないつもりです。そのかわりに復讐を果たした時には、その足で即座に自首いたします。情状酌量を求める気はありません。たとえ死刑が宣告されても構いません。

 

「スガノカイジは長野方面に逃げた」という情報を死に際のトモサキから聞き出した長峰は、パソコンと猟銃をもって向かいます。追う長峰、逃げるスガノ、二人を追う警察。

 

 死刑制度や少年犯罪について述べる気はさらさらありませんが、強いて言うなら、自分が当事者なら復讐しますし、当事者でなければ復讐には反対します。

 一昔前に「どうして人を殺してはいけないのか」という問いにどうこたえるのか、という話題がありました。その解答例として「自分がされたらいやなことはしてはいけないから」「もう自分はまっとうな人間だと思えなくなるから」などがあったのを覚えています。これらの解答では、この作品の長峰を止めることはできません。

 ミステリーであり、「さまよう刃」という題がこの作品のテーマとなっていますが、そういうもろもろ、頭に入ってきません。このひりつく展開にのめり込みました。