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『闇を裂く道』吉村昭 そこのきみ、トンネル掘ってみるか。

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 丹那トンネルを知ってますか?

 東海道線を使ったことはありますか?在来線だと函南~熱海間、新幹線だと三島~熱海間にある長さ約8Kのトンネルです。そこそこ長いので、在来線だと気づきます。「あれ?このトンネル長くない?」という感じです。新幹線だと気づかないかな?この本は、そのトンネルを掘る話です。

掘り始める 

 大正7年3月21日、熱海と三島を結び長さ7804mの当時最長トンネルの工事が始まった。高騰する電気料金のために予定していた電気が一切使えず、つるはしで掘り進めた。地盤が崩れないように、松の木を鳥居の様に組み、その間に厚い板を張った。1日3交代、8時間ずつ働いた。

ガス発生 

 途中、穴の中で抗夫が倒れた。どうやら悪性のガスが出ているらしい。換気設備がない限り、ガスを防ぐことができない。しかし、電気が使えないためその設備が作れない。ガスは無色無臭で、発生したかどうかは抗夫の体調に委ねるしかない。このままでは死亡事故の可能性もある。

 協議の結果、カナリヤを使うことになった。その理由は「カナリヤはガスが出たら鳴く」というものだった。小田原でカナリヤを3羽買い、坑道に入れた。

山が抜けた 

 工事開始から3年たち、掘り進めた距離は1363mまで来た。山の中から異様な音が轟き、詰所の建物がはずんで揺れた。抗道の奥から黒い突風が押し寄せてきた。

 調査の結果、熱海側から317m付近で崩壊し11名が下敷きになったらしい。しかも、その奥で17人が閉じ込められている可能性があることもわかった。彼らを一刻も早く救出するために、救助抗を掘ることとなった。

 3方向から救助抗を掘り始めた。しかし、丸太や岩石、金属枠などに行く手を阻まれ思うように掘り進めることができない。

穴の中では 

 穴の中では17名が生きていた。隊長はみなを励ました。必ず助けが来る、救助抗を掘っているはずだと。皆で励まし合った。ガスは出ているだろうが不調を訴えている者はいなかった。湧水は豊富で乾くことはない。問題は食料だ。

 腹が減った。土と岩しかない。錐が腹にもみこまれるような空腹感に襲われた。暗闇の中で誰かが何かを食べている音がする。藁を食べていた。座布団の代用の藁だ。飢餓地獄が始まった。もうすぐ死ぬ。呼吸が苦しくなってきた。頭痛を訴える者も出てきた。いよいよここまでか。隊長も死を覚悟した。皆が体を横たえたまま眼を閉じた。深い静寂が広がった。

 静寂の中、かすかな音がした。確かに音がする。しかも、連続的に何かを叩いている音だ。間違いない、救助抗が近づいている。隊長は皆に声をかけたが、誰も反応しない。寝たまま尿をしている者もいた。「みんな元気を出せ、俺が故郷の歌を歌ってやる」隊長は泣きながら歌った。皆、故郷を思い出し泣いた。そして、眼を閉じた。 

 救助抗を掘る作業は難航を極めていた。もう崩落から一週間がたつ。全員死んでいるかもしれないが、掘るしかない。その手を止めたらいけないのだ。

救出

 穴が貫通した。中は漆黒の闇と深い静寂が広がっていた。何かが動いた。生きているのか?男たちの体が一斉に揺れている。彼らは号泣していた。全員無事だった。

泥水が湧く

 その3年後、熱海から入り口381mの地点で突然泥水が湧いた。凄まじい勢いで噴き出した。トンネルは奥に行くほど低くなっていた。中では16名が作業にあたっていた。そこには泥水が天井まで届いていると見られた。外からスコップで泥を懸命にかきだすが、まったく掘れない。そして、16日が経過した。もう生きているとは思えない。そして、死体が発見された。全員死亡。水死だった。

 

 16年という長い時間をかけて、ようやく完成しました。新幹線はこの丹那トンネルではなくその後掘られた新丹那トンネルを通っています。丹那トンネルの真上を通っているので、この本とかぶらせるのもありだと思います。今通っているトンネルが、丹那トンネルなんだ、と。 

www.yama-mikasa.com 

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