読書生活 

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人間関係に悩んだら 武将に学ぶ処世術 

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人間関係に悩まない人などいない 

 本にこうありました。

人間というのはなんだろう。と、家康は、その道に得手な男ながら、考えたにちがいない。家康がとらえている人間の課題は、人間というのは人間関係で成立している、ということであった。人間関係を人間からとりのぞけば単に内蔵と骨格をもった生理的存在であるにすぎないということを、この人質あがりの苦労人はよく知っていた。(略)家康にとってもっとも大切だったものは人間の関係であり、このためにはどういう苦汁も飲みくだすというところがあった。『覇王の家 上巻』司馬遼太郎

 徳川家康がこう言ってます。「人間関係がすべてだ」と。

 徳川家康や豊臣秀吉、こういった天下人はわたしたちのように人間関係で思い悩むことなどなかったのではなかろうか、と思っていました。農民からの税を厳しくして富をなし、反抗的な部下には斬首もいとわない厳しい処罰を下し統制する、そう思っていました。実は違います。天下を取った彼らでさえも、人間関係に悩んでいたことがわかります。

人間関係に悩まないための処方箋 

 人間関係に悩まないための処方箋として、その具体的方法が本やネットに山ほど出ています。たとえば

・自分の心を開く。

・人の悪口を言わない。

・相手の言うことに耳を傾ける。

・相手に感謝の気持ちを持つ。

などなど、山ほどありました。

 秀吉も、人の悪口を言わなかったそうです。

秀吉は謀略の才をもって信長に愛され、ゆえに周囲から妬まれた。だから、自戒していた。人の批評は絶対にしない。我慢した。つらく苦しかった。しかも毒気がないことを印象づけるために思い切って陽気な自分を演出した。陽気であれば盗賊でさえ愛嬌者になるという機微を知り抜いているようだった。『新史 太閤記 下』

 悪口を言っちゃいけないことはわかります。でもできないんですよ。悪口だけじゃない。嫌いな相手にも心を開き、嫌な上司の悪口も言わず、意味不明な取引相手の苦情に耳を傾け、それらすべてに感謝の気持ちを持つ、そんなこと、できますか?

 わたしが人間関係で悩んだときは、『太閤記』や『覇王の家』なんかを読みます。すると、「秀吉や家康ですら悩んでいるんだから、わたしが悩むのは当然だ」と思えるのです。その本を開くと、わたしと同じように苦しんでいる英傑がいます。これは、ほっとします。別に、明日からわたしを取り巻く人間関係がよくなるわけではありません。

相手を許す

人付き合いがうまいというのは、人を許せるということだ。  

アメリカの詩人、ロバートフロストの名言です。また、ガンジーはこう言ってます。

弱い者ほど相手を許すことができない。許すということは、強さの証だ。

 職場にいませんか?相手の都合や利害を考えず、自分を中心に物事を回そうとする人間や、並外れて自己顕示欲が強くまわりの迷惑を考えない人間や、性格に癖が多く周囲と無用の摩擦を起こす人間や、無意味としか思えない厳しい規律を導入する上司や、競争心が強く好悪の情が激しくえこひいきも強い上司‥。悪口ならいくらでも出てきます。

 罵倒されても黙って耐える。ガンジーも言ってます。許すことが強さです。でも、そいつは明日も自分に横柄な態度を取ります。「もう限界だ」ということ、ありますよね。あまりに傲慢な相手に対して、ずっと耐えているのはよくないようです。秀吉を例にとります。

 織田家の筆頭家老、柴田勝家はいつもいつも秀吉を馬鹿にします。認めようとしません。ずっとへりくだった態度を取っていた秀吉です。なんとか勝家と和解したいといろいろと折れて出ましたが、もう限界です。そして、秀吉はこうしました。

(相手がそんな仕様である以上、これ以上に折れて出れば余人の蔑みを買う)とおもい、藤吉郎自身、勝家という大男と廊下ですれ違ってもぷいとそっぽを向き、会釈もしないようになった。『新史 太閤記 上』司馬遼太郎

 「これ以上折れて出れば余人の蔑みを買う」です。あまりへりくだってもまわりにバカにされるということですね。

もう耐えられない!というときは

 まとめますよ。人間関係に悩んだら

①悪口言わない

②許す

③無視する。

 ここまでやってだめなら‥

④反撃する、です。やりかえしましょう。でも、その前にこの言葉を思い出してください。

細道で犬に出会ったら、権利を主張して噛みつかれるよりも、犬に道を譲った方が賢明だ。たとえ、犬を殺したとしても、噛まれた傷は治らない。

 アメリカの元大統領、リンカーンの名言です。やり返して勝ったとしても、傷は受けますし、周囲からの評判もやはり落ちるでしょう。

 どうですか?行きますか?

なら反撃しましょう。ただ、行くとこまで行きますよ。これくらいの気持ちでいってください。 

「死ねやぁっ、死ねやぁっ」

と下知し、さらに声をふりしぼって、

「やれ、金吾(小早川)なる者は、千載の醜名を残したぞ。裏切り者を崩せ。突けや。雑兵には目もくるるべからず。一途に金吾が旗をめがけよ。金吾を討て、金吾を地獄に落とすのに牛頭馬頭邏卒(ごずめずらそつ)の手をば借りるべからず。汝らが地獄の邏卒5の先駆けをせよ」

と喚きつつ敵陣へ乗り入れてゆく吉継の声、姿は、鬼神が乗り移ったかのごとくであった。大谷勢は、死兵と化した。『関ヶ原 下』司馬遼太郎

 一緒に地獄に落とす勢いで行きましょう。関ヶ原のクライマックス、大谷刑部の台詞です。

 もう一つ。

人間とはなにか、ということを、時勢に驕った官軍どもに知らしめてやらねばならない。驕りたかぶったあげく、相手を虫けらのように思うに至っている官軍や新政府軍の連中に、いじめぬかれた虫けらというものが、どのような性根をもち、どのような力を発揮するものかをとくと思い知らしめてやらねばならない。長岡藩の全藩士が死んでも人間の世というものはつづいてゆく。その人間の世の中に対し、人間というものはどういうものかということを知らしめてやらねばならない。『峠 下』司馬遼太郎

健闘を祈ります。