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ひらがな表記か漢字表記か。漢字とカナの使い分け

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漢字とカナ問題

 「トキ」は「時」か「とき」か、「コドモ」は「子供」か「子ども」か。みなさんどうしてますか。

社に規定はありますか?

その規定では、一律に「これは漢字」「これはひらがな」と決まってますか?

規定がない方や、社用以外の文章ではみなさんどうしてますか?

自分の中で何か決まりはありますか?

今回はそういう話です。

 漢字とカナの使い分け問題についてざっと調べてみました。この漢字とカナ問題には大きく3つのパターンがあるようです(Yama調べによります)。

 ご指導、ご鞭撻はお手柔らかにお願いします。

①「公用文における漢字使用等について」 に基づく

 何十年かに一度、国が「公用文における漢字使用等について」という指針を出します。これは何かと言いますと、

一般の社会生活において、現代の国語を書き表すための漢字使用の目安

です。これは、総理大臣の名で出され国の各行政機関が作成する文書のもとになります。検索すれば出てきます。今使われているものは平成22年に「内閣総理⼤⾂ 菅 直⼈」名で出されました。新しいものが出されたら、今までのものは廃止されます。

 この「公用文における漢字使用等について」では、多くの単語を

「原則漢字表記」

「原則ひらがな表記」

「漢字とひらがなを使い分けて表記」

この3つに分類しています。「公用文における漢字使用等について」はわずか3枚(A4)の紙です。ここに掲載されている表記例をあげてみます。

原則 漢字表記の言葉

【代名詞】

俺 彼 誰 何 僕 私 我々 

【副詞】

余り 至って 大いに 恐らく 概して 必ず 必ずしも 辛うじて 極めて 殊に 更に 実に 少なくとも 少し 既に 全て 切に 大して 絶えず 互いに 直ちに 例えば 次いで 努めて 常に 特に 突然 初めて 果たして 甚だ 再び 全く 無論 も 専ら 僅か 割に

【連体詞】

明くる 大きな 来る 去る 小さな 我が(国)

【接続詞】

及び 並びに 又は 若しくは 

原則 ひらがな表記の言葉

【副詞】

かなり ふと やはり よほど 

【接尾語】

げ(惜しげもなく) ども(私ども) ぶる(偉ぶる) み(弱み) め(少なめ)

【接続詞】

おって かつ したがって ただし ついては ところが ところで また ゆえに

原則 漢字とひらがなを使い分ける言葉 

 次のような語句を,( )の中に示した例のように用いるときは,原則として,仮名で書く。

例ある(その点に問題がある。)
いる(ここに関係者がいる。)
こと(許可しないことがある。)
できる(だれでも利用ができる。)
とおり(次のとおりである。)
とき(事故のときは連絡する。)
ところ(現在のところ差し支えない。)
とも(説明するとともに意見を聞く。)
ない(欠点がない。)
なる(合計すると1万円になる。)
ほか(そのほか…,特別の場合を除くほか…)
もの(正しいものと認める。)
ゆえ(一部の反対のゆえにはかどらない。)
わけ(賛成するわけにはいかない。)
・・・かもしれない(間違いかもしれない。)
・・・てあげる(図書を貸してあげる。)
・・・ていく(負担が増えていく。)
・・・ていただく(報告していただく。)
・・・ておく(通知しておく。)
・・・てください(問題点を話してください。)
・・・てくる(寒くなってくる。)
・・・てしまう(書いてしまう。)
・・・てみる(見てみる。)
・・・てよい(連絡してよい。)
・・・にすぎない(調査だけにすぎない。)
・・・について(これについて考慮する。)

 固い文書を作成するときに、漢字表記かひらがな表記かで悩んだら、まずこの「公用文における漢字使用等について」を参考にするとよさそうです。悩んだ言葉はたいていこれにのっています。

 冒頭の「トキ」は、「漢字とひらがなを使い分けて表記」に分類してあります。

②状況に応じて漢字とカナを使い分ける

  先に書いたとおり、「公用文における漢字使用等について」では、「トキ」を「時」にするか「とき」にするかは、その語を使う状況に応じて使い分けるのが原則だとあります。

 使い分けるパターンには「意味で使い分ける」「読者層によって使い分ける」「視覚的なわかりやすさで使い分ける」の3パターンがあります。以下にこの3パターンを詳しく見ていきます。

A:意味で使い分ける

 先の「公用文における~」はこのパターンです。

 「トキ」だとこうなります。

時(とき)そのものを示すときには漢字で書く。
場合の意味で使うときには平仮名で書く。

 「トキ」を「場合」で置き換えられるときはひらがな、それ以外は漢字で書きます。例えば、「タイムセールです、今が絶好の買いドキですよ」の「ドキ」を「場合」で置き換えると「タイムセールです。今が絶好の買い『場合』ですよ」となり、不自然です。なので、先の文章は「タイムセールです、今が絶好の買い時ですよ」というように漢字表記になります。 

B:読者層によって使い分ける

 この場合、読者層を小中学生やその内容の初心者として設定しているならひらがな表記が増えます。「既に」や「殊に」は、先の「公用文における漢字使用等について」では原則漢字表記です。しかし、読者に難しい印象を与えるということで、わざと「すでに」「ことに」というようにひらがな表記にします。

 「トキ」も同様です。子どもや初心者へのマニュアル本なら、意味は関係なく「とき」とひらがな表記になりますし、それ以外なら「時」と漢字表記になります。

C:視覚的なわかりやすさで使い分ける

 これは本多勝一さんの主張です。次の文章を見てください。

a:その結果化学反応が活発になった。

b:その結果いま化学反応が活発になった。

 「イマ」の使い分けです。aとbのどちらが見やすいですか?

 視覚的なわかりやすさはbですよね。aは漢字がたくさん続いて見づらいです(と本多さんが言ってます)。このように漢字が続いて見づらい場合は、bのようにひらがなで書きます。

 では、もう一つのパターンも見てください。

a:先生はほんのおならをしました。

b:先生はほんのいまおならをしました。

 今度は、aの方が視覚的にわかりやすいですよね。こういう場合はaのように漢字で表します。このように、視覚的なわかりやすさを考えて臨機応変に使い分けるという立場です。

 例えば、「御挨拶」という言葉は「公用語~」では漢字表記が原則ですが、この立場なら「ご挨拶」と書くことになるでしょう。

 一概には言えませんが、「トキ」もその前にくる文字が漢字なら「とき」とひらがな表記になるでしょうし、ひらがなが続くなら「時」になるでしょう。

③言葉の芸術 書き手のセンス

 この文章を見てください。

ためらいがちに射してきた曙は、はじめは橙いろに朱をくすませた枯れた押花のであったのが、すでに朱の一になると共に、金星と水星の光を呑んだ。『美しい星』三島由紀夫

 「イロ」を同じ一つの文章内で使い分けています。「橙いろ」はひらがな表記なのに対して「押花の色」は漢字表記なので、「イロ」の前に漢字が来る場合は「いろ」とひらがな表記にするのかと思いきや、続く「朱の一色」は漢字表記です。これだけでは規則性を見つけることができなかったので、同じ作品内で「イロ」を探してみました。

東の横雲は葡萄いろになり、空はほの白く、南西の山々の稜線はくっきりし、オリオンの三つ星が薄く残っていた。

「葡萄いろ」とあります。そこで、色の名称を表す場合はひらがな表記にしていると予想できます。これにならえば、「赤いろ」「黄いろ」となるでしょう。ただ、三島由紀夫がどうしてそういう使い分けをしているのかはわかりません。 

 もちろんこの場合、「トキ」の表記は著者の感覚に委ねられます。

 

よろしければこんなのもどうぞ。 

www.yama-mikasa.com 

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