読書生活 

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戦争文学を読んでみた。小説『野火』大岡昇平 感想

『野火』持ってますけど買い直して再読。 

 『野火』…家にありますが、買い直しました。

 終戦記念日に近いこの時期、テレビでは戦争をあまり取り上げなくなりました。意外と出版社はがんばっているようで、本屋には戦争文学が並びます。応援する気持ちを込めて、この時期は戦争関連の本を買うようにしています。がんばれ本屋。ということで、今回は『野火』を買い直しました。

 

『野火』あらすじ  

舞台はフィリピン レイテ島 

 舞台は太平洋戦争末期のフィリピン、レイテ島。主人公の田村は、肺病のために部隊を追われ、野戦病院からは食料を持っていないため追い出されます。部隊に戻っても入れてはもらえず、島をさまようしかありません。

混沌とする精神 

 たまに日本兵に遭遇しても、食料がなければ仲間にしてもらえず、かといって、一人では日本軍の動向もわからない。日本軍の動向が生への唯一の手掛かりであり、希望の道ではあったのですが、そのうち、何のために生きて居るのか、自分がここにいるのはなぜか、それすらわからない混沌とした精神状態に陥ります。疲れた疲れた疲れた…。

 フィリピン人を殺してしまったことから、この混沌状態は加速していきます。膝までつかる沼を行き、機銃掃射に逃げまどい、疲れ切った田村は山中で横になります。

 すると…。

投降を決めるも 

 機銃掃射の跡を颯爽と走る赤十字のトラックが田村の目に止まりました。作業員は、機銃掃射の残骸(遺体)に横付けし、慣れた手つきで遺体を担架に乗せています。すると、その遺体の中に埋もれていた生者が介抱されている!

 「投降したら死を免れる」この様子を見た田村は投降を決意します。白旗代わりに自分の褌を棒に括りつけますが、褌は茶褐色でどう見ても白旗ではなく、この褌が米軍に投降の意志が伝わるのか不安になります。

 褌を白旗もどきにかかげ米軍を待つ田村。ようやく米軍が来た。「よし投降だ」と思ったその時、別方向から投降した日本兵が米軍に射殺されます。

希望なし 食べ物なし 

  銃なし、帽子なし、靴もなし。裸足で当てもなく歩くしかありません。ちぎれた腕や足が転がる野をひたすら歩きます。「生きている」という実感もなく、ただ足を進める田村。

 猛烈に腹が減るのですが、森に甘い実などありません。渋い実や硬い歯ばかりで、中には毒を含むものもあるようです。虫食いの跡さえあれば毒はない、そう判断して、なんでも口に入れます。

 爆風ではがれた自分の肉片を食べ、自分の腕に張り付いた蛭をはがして食べ、死者に張り付いていた蛭を取り、蛭から滴る血を口に流し込む。

「俺が死んだら、ここを食べていいよ」 

 出会った日本兵が死ぬ間際、自分の左手を指さして「俺が死んだら、ここを食べてもいいよ」と言い死にます。

 人気沸騰中の猫まんが『俺、つしま』に出てくる場面とそっくりです。

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 まんがだと笑えるんですけどね、『野火』では本気ですから。 

 

 物語のラストで、人肉を食べることで生き延びてきた日本兵2人と合流します。この2人、歩いている日本兵を射殺して食べているんです。本当なら田村もやられるところだったのですが、その2人が偶然田村と旧知の仲だったことで助かります。

 3人になったからか、パワーバランスが崩れ、お互いに殺し合うようになります。そして精神は完全に崩壊し…。

 

 ほとんど戦闘シーンなし。というより、戦ってませんからね。田村の独白がけっこう長く、深い。

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