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『人魚の眠る家』東野圭吾 ネタバレなしの感想。

『人魚の眠る家』 あらすじ

 娘がプール事故で脳死状態となる。臓器を提供する意思を問われ悩む両親。思案の末、臓器移植を受け入れる決断をする。ところが、反射運動により娘の手が動くのを見てしまった両親は、そこに娘の意識を感じてしまう。娘が元に戻るかもしれないという万が一の期待を込めて、臓器提供を拒否し娘の生存にかける。ところが…。

 ってこんな感じです。

『人魚の眠る家』 感想

 冒頭のプール事故以外、特に事件が起こるわけではありません。「脳死」という重いテーマで物語は淡々と進みます。犯罪加害者がテーマの『手紙』や、少年犯罪を扱った『さまよう刃』に似ています。読み終わったこのモヤすっきり感もそっくりです。

 問題の色々な側面を浮き彫りにするための状況設定が実に見事です。小説というよりは精巧に設計されたシミュレーション結果を読んでる感じかな。冷静に読むと不気味とも思える一方、 脳死かと思い悩む親や、臓器移植しか手が残されていない親の気持ちも、自分の子どもがそうだったらと思うと胸苦しいほどよくわかります。

 どこかで読んだんですが、脳死という概念は、臓器移植をしたい医学界の要請によって生まれたとのこと。臓器移植ができるまでに医学技術は発達した。あとは、移植するための健康な臓器が必要、確かそんな感じでした。

 これからますます医学が進化して、臓器を細胞レベルから作れるようになったら、臓器移植なんてなくなるのかな、と思いました。

 麻酔ができる前は、痛みで動かないように患者を台に縛り付けて手術をした、痛みで発狂したり死んだ入りする患者もいたと聞きます。

 そんな話を聞くと、「なんと野蛮な…」という感想をもつのですが、未来の人間も「100年前って人間の臓器を取り出してたらしいぜ」とか「お金をもらうために臓器の売買も行われていたらしい」なんて聞いて同じような感想をもつのでしょう。

映画化するとのこと。子ども役が重要なのでは?

 主役の夫婦を西島秀俊さんと篠原涼子さんが演じるとのこと。これ、子役が重要ですね。ほとんど動かないけど、人為的な刺激で時にロボットのように動く脳死状態のお姉ちゃんはもちろん、徐々にお姉ちゃんの状態やお母さんが生み出す家内の狂気じみた雰囲気を感じ取り爆発する弟さんの演技が、この映画の鍵を握っています。楽しみだなあ。 www.yama-mikasa.com

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