フリーのライター「北尾トロ」さんが、日常生活の中にある「やってみたいけど、ちょっと勇気がいるよな」と、ついためらってしまう場面を思い出し、勇気を出してやってみた、そんな本です。
全部おもしろかったですが、特におもしろかったものを紹介します。
「電車で知らないオヤジに話しかけ、飲みに誘う」
ことごとく失敗します。なぜかおばあちゃんとカラオケに行くことになりました。
「GWのお台場で孤独な男と人生を語り合う」
何人にも声をかけましたが、ホモと間違えられ逃げられます。
「公園で遊ぶ子どもの集団に入れてもらい、大人の力を見せつける」
集団で遊ぶ子どもをなかなか発見できません。何とか見つけた子どもに試みたものの、誘拐犯に間違えられ通報寸前までいったため慌てて逃げました。翌日、子どもの集団を求め千葉まで遠征します。野球集団(もちろん野球クラブではなく純粋な少年たち)に無理矢理まざり、二塁打を放ちました。
「電車で大声を出すヤンキー集団を注意する」
迷惑なヤンキー集団に車内も険悪な雰囲気。みんながいやな顔をしている。今がチャンスだ!と注意します。殴られることを覚悟していました。しかし、言われた通り静かにするヤンキー集団。拍子抜けするも、車内から一斉に感謝の視線を感じご満悦のトロさん。
ところが、駅に着き下車しようと立ち上がったところ、誰かに背中を思い切り蹴られホームで四つん這いになってしまいました。振り返るとヤンキー集団が高笑いしてるじゃありませんか。さらに、さきほどまでトロさん側にいたはずの車内の人々も、トロさんの惨めな四つん這いを見て笑っています。ヤンキーはまだいい、なぜ君たちがわらうのだ、ととても落ち込みます。
「激マズ蕎麦屋で味の悪さを指摘する」
本当にまずい、と評判の店をリサーチ。自身も行って味を確認します。確かにまずい。何度も通ってその安定したまずさを確認、その他、料理人のやる気のなさや店内の不衛生さもチェックしました。
いざ本番。激高すると覚悟していたものの、意外と腰の低い料理人。自身の蕎麦のまずさを自覚していたようです。
「ウインズにたむろする席取りオヤジに着席権を主張する」
椅子にスポーツ新聞を置いておけば、どれだけ離席していてもOKという暗黙の了解がウインズにはあるらしいです。その暗黙の了解をぶち壊そうと、スポーツ新聞の上に堂々と座り席の権利を主張するも、やくざっぽい仲間を呼ばれ退散しました。
「人前で自作の詩を朗読する」
考えただけで恐ろしい計画にびびるトロさん。仕方なく詩の朗読会を調べます。その結果、高田馬場のカフェで開催されているとの情報をつかみ、エントリーしました。
当日。薄暗い店内に静まり返った観衆。いよいよスタート。詩の朗読が響き渡りますがどの詩も恐ろしく寒い。自分の番が来ました。足がすくみ、声が上ずり手が震えます。
終了後、何とも言えない満足感を得ます。死ぬほど恥ずかしいと思っていた詩の朗読が少し好きになりました。
これ、20年前の本です。トロさんはこのとき41歳だから、今は還暦を迎えているはずです。この企画、今のユーチューバーに似ています。