この本で、遠藤周作は嫉妬の苦しみとして3つあげています。
一つ目は、
嫉妬の苦しみとは、人間の自尊心が最大に傷つけられた苦しみ
自分の彼女が、別の男に心変わりしたら、ねえ。トータルで見て、あなたより彼、と評価されるわけですから、ねえ。
二つ目は、
嫉妬の苦しみとは、過度の想像のために生ずる苦しみ
嫉妬にかられた男女は、相手に妄想をもつようになる。そして、どんなことからでも疑惑を起こし、相手を疑い、自分を苦しめるという結果になる、と。まあねえ、嫉妬というものはそういうものですから、ねえ。
三つ目は、
嫉妬の苦しみとは、過去の過ぎ去ったことでも今のことのように思われるし、未来のことも現在あるように想像してしまうことから生ずる。
ここで、今回の記事のお題です。あなたは、過去の男女関係を今のパートナーに言いますか?
ここに一人の娘がいた。ある青年を愛して体を与えた。やがてその青年と別れ、その青年のことはもう彼女の心にも意識にもすっかり消えてしまった。
何年かたって彼女は結婚した。そして夫を愛した。彼女は幸せだった。だから、ある日、夫にウソをつきたくないという感情から「ごめんなさい、昔、こんなことがあったの」と過去のことをありのまま告白した。そして、「でも、安心してね。その人のことなんかこれっぽっちも心にないのよ。愛しているのはあなただけよ」と保証したわけである。
だが、その日から夫は嫉妬に苦しみはじめた。つぶさに繰り返し繰り返し、昔のことを問いただし、怒り歎くのである。
彼女にはなぜかわからなかった。もうとっくに終わったことだ。にもかかわらず、夫はなぜ嫉妬を起こすのだろうか。
やがて彼女と夫との仲はしっくりいかなくなり、やがて別れてしまった。
こういう例を出して、今の恋愛や結婚を大事にしたかったら、昔のことを告白してはなりません、と言います。当たり前でしょう。
この本、高校生のときに読みました。そのときはおもしろい、と思ったのですがなぜでしょう、再読した今ぴんときません。そもそも高校生がなぜ「愛情セミナー」なんていう本を買うのでしょう。ネット通販などない時代、この本を高校生が手に取りレジに持っていき店員さんに顔を見られながら買う。恥ずかしい。確かに当時悲しい失恋をしたことは覚えています。だからといって「愛情セミナー」って。定価320円とあります。時代を感じるなあ。当時のわたしはこの本を読み、何を感じたのでしょう。
最後にこれは、その通りだなあと感じたところが一つあったので紹介します。
相手の自分に対する気持ちがわからないときは、相手の嫉妬の度合いを調べればいい。「あたしのこと、好きだと言ってくれる人がいるの」と相談をもちかけるふりをしてみるのだ。「え?ほんと?どんな人?」「で、君はその人のことをどう思っているの?」と彼が聞いてきたらシメたものである。彼は君のことが好きなのだ。架空の別の男に取られたくないのである。
だが、こんなとき「そう、よかったな。ところで、今度の天皇賞、どの馬がいいかな?」などと全く関係ない会話をはじめる男は、まず、脈なしと思ってあきらめるべきである。
わたしもそう思います。天皇賞の馬を聞くようでは、ねえ。