読書生活 

本もときどき読みます

あなたと彼は同級生で、あなたの奥さんは新入社員で、彼の奥さんは常務で

 先日、久しぶりの東京出張がありました。わたしと同年代の社員が集まる研修です。講師の話を聞きながら、周囲を見渡してみると、記憶の片隅にある顔が何こもあります。講師の話の途中でしたが名簿で確認してみると、「ああ、彼だ」と。もちろん女性の方もたくさんいました。

 その夜、見知ったグループがいくつか重なって、飲みに行くことになりました。月一で会うような人間ももちろんいますが、ほとんどが、10年~15年ぶりくらいに会う人たちです。同窓会のような雰囲気になりました。

 家族の話、子どもの話、趣味の話…などなど話が弾みました。どのテーブルも盛り上がっています。わたしも飲めないお酒をちびちびとなめながら参加しました。一番盛り上がった話題は、新入社員と結婚した同期(男性)がいたことです。なんと、年の差20歳!。「乾杯!」とどのテーブルの人間も一斉に声をそろえて祝福しました。

 酒量はますます進み、各テーブルの話の内容が徐々にディープになってきました。同僚の一人(Aとしておきます)が、「今日の講義の内容がよくない」とぐちり始めました。わたしは彼のことをよく知っています。いい奴なんですが、お酒に飲まれるタイプです。ぐちは徐々にエスカレートし「あの常務の話はなんだ!わけがわからない!」と吠えるA。「特に二人目のN常務、ありゃあだめだ!」と続けます。たしかにN常務の話はその場しのぎの感がいなめず、内容もあまり頭にはいってくるものではありませんでした。

 「何にもわかってない。あんなおばさんがうちの常務って、うちの社は大丈夫なのか?」と他のテーブルも巻き込んで吠えるA。もう完全にぼやきの域を越え、炎上です。こうなると、もう止まらないことをわたしは知っています。ただただ静観です。

 すると、久しぶりにあった同僚の一人(Bとしておきます。10年ぶりに会いました)が「今日、来てなかったあいつ、会社辞めたって聞いたけど本当?」とか「〇〇(関連会社です)が最近やばいって聞いてるけど、どう?」などとAの常務ネタとはまったく関係ない話をふります。

 しかし、Aは止まりません。「〇〇がつぶれようが知ったことか!あんなおばさんが常務なら、〇〇より先にうちがつぶれるわ!」と大炎上。Aに賛同する酔っ払いも出てくる始末です。

 そこに突然、同僚の一人(Cとします。わたしははじめましてです)がグラスを置いて、「本当にもうしわけない」と頭をさげたんです。みんなきょとんとしています。どうしてあなたがあやまるの?

 すると、さきほどのBが「あのN常務、こいつの女房なんだよ」とポツリ。わたしはほとんど同い年の人間が「女房」という言葉を使うことにも抵抗を感じたのですが、そこはスルーして話を聞きました。どうやら姉さん女房のようです。苗字もNさんです。Cさんによると、今日の研修では別の常務が話すはずだったのですが、急用で参加できなくなり、急きょ奥さんが講義をしたとのことでした。なるほど、原稿やパワーポイントなどは用意してあったものだったのでしょうが、その場しのぎ感が出ていたのはそのためだったのでしょう。

 当然Aはひたすら謝りました。場はしらけにしらけてしまいました。

 わたしも、いろいろと考えさせられました。すごく不思議な感じです。奥さんが常務と、奥さんが新入社員。それがわたしのほぼ同年齢に存在するということ。家庭の様子など、全く違うでしょう。幸せは人それぞれです。