読書生活 

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夢の国 TDLの奇跡 魔法のチケット

 10年ほど前、平日に休みが取れました。保育園の年中だった息子が行きたいと言っていたディズニーランドに連れて行ってやろう、と、妻も休みを取り3人で行きました。

 車で出かけ、10時ころ到着しました。息子が一番行きたいと言っていた「プーさんのハニーハント」のファストパスを、まっ先に取りに行きました。

 平日ならすぐ取れると思っていたわたしたちが甘かった。取れたハニーハントのファストパスの時間は「20:30」。日帰りの計画だったのでとても無理です。あきらめました。泣く息子を見てこちらも悲しい気持ちになりました。小雨もぱらつき、ますます沈むわたしたち3人。雨の平日なのにこんなにたくさんの人がいるのはなぜだろう、ほとんどが学生さんなのでしょうが、中にはあきらかに小中学生もいました。ほんとにうらめしい。

 その後、片っ端から人気どころのアトラクションのファストパスを取りに向かったのですが、結局日帰りで乗れて帰れるファストパスチケットは「ビッグサンダーマウンテン」のものだけでした。確か14:00くらいの時間のチケットだったと思います。うちの子はジェットコースター系が嫌いでしたが、TDLに行ったという証を残すため、そして、何とか取れたファストパス券を使うため、なだめすかしてなんとか乗ることにしました。

 それまでの4~5時間、「ジャングルクルーズ」や「ウェスタンリバー鉄道」に乗りました。今考えると、雨の中なぜそんな屋外のアトラクションばかりを選んだのでしょう。

 ビックサンダーマウンテンの時間になりました。嫌がる息子をむりやり座席に乗せ、いざ出発!正直言うと絶叫系はわたしもあまり得意ではありません。誰も幸せにならないジェットコースターが動き始めました。ところどころ止まりそうになるんですよね、あれ、止まるのかな、と思いきや、また動き出す。どんどん加速して、一気に坂を曲がりながらかけ下りる。本当に困った乗り物です。

 そして、また減速。どうせまた加速するんだろう、と全身を硬直させながら構えてそのときを待ちますが、ピタッと止まったんですよ。あれ?と思いましたが、また急に動くんだろう、と油断せず待ち構えること数分。まわりの乗客もざわざわし始めました。

 すると

「トラブルが発生しました。係員の指示に従ってください」

というようなアナウンスがあり、線路の脇の細い細い通路から制服を着たお姉さんが来て、「下りてください」とわたしたちに言います。そして、ついてきてくれ、と。こんな道があったのか、ときょろきょろしながら道を歩くこと数十m。お姉さんは壁に手を当てました。よく見るとドアノブがありまして、そこをつかみドアを開けてわたしたちはそのドアの向こうに進みました。

 中は、TDLとは思えない全くの無機質の通路と階段の連続です。わたしたちを含めたお客さんが一列になりそのお姉さんのあとに続いて歩きました。そして、またドアノブの前に立つと、お姉さんがわたしたちに向かってこう言いました。

 「本日はアトラクションの不具合により、みなさまに不快な思いをさせてしまいましたことを、深くおわび申し上げます。そのおわびとして、みなさまにこのチケットをお渡しします。このチケットは、今日一日、一回だけ、どのアトラクションも待ち時間なしで乗れる魔法のチケットとなっています。このドアの向こうは夢の国、TDLです。それでは、夢の国の冒険をごゆっくりお楽しみください

 10年前の記憶ですが、内容はだいたいこんな感じだったと思います。そして、一人ずつに魔法の青いチケットをくれました。

 もちろん、そのドアの向こうはTDLでしたが、ビックサンダーマウンテンからはずいぶん離れていた場所だったと記憶しています。半信半疑でそのチケットを握りしめ、もちろん「プーさんのハニーハント」へ。そこの係員さんに魔法のチケットをおっかなびっくり見せると、わたしたちに頭を下げ、優しく中へ招き入れ、どんどんどんどん進み、すんなりと乗車できました。くるくる回りながら、息子の嬉しそうな顔を見て一日の疲れが吹き飛びました。まさに奇跡!魔法のチケット!こんなことってあるんだなあ。

 調べてみたら、今でもあるみたいです。なつかしい。まさに魔法のチケットでした。