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「読売」と「朝日」社説読み比べ 加計問題閉会中審査

 加計問題の審査が盛り上がっています。特に熱かったのが7月24日(月)。前川元文科省次官と和泉首相補佐官のやりとりは多くのメディアを騒がせました。

 翌日25日(火)の読売と朝日の社説を読み比べてみました。両方とも、ネタは加計問題についてです。

 同じ話題どころか同じ事実やセリフをもとにしても、新聞社によってこうも主張が異なるいうことがわかります。

 まず、加計学園が特区に手を挙げていることを首相が知ったのは今年1月だったということについて。

 読売は、

 首相も、学園による学部新設申請を知ったのは今年1月だと説明した。

 首相らの発言は不自然ではないか、との見方もあるが、事実なら、首相の友人を優遇したという批判は成り立つまい。

 「首相らの発言は不自然ではないか、との見方もあるが、事実なら、首相の友人を優遇したという批判は成り立つまい」

 首相の言っていることが本当ならそういう批判は成り立たない、ということです。そりゃあ、そうですが。まわりくどい言い方です。

 次、朝日。

 首相は、加計学園が特区に手を挙げていること自体、知ったのは、学園が事業主体に決まった今年1月だと答弁した。

 にわかに信じがたい。

 首相は特区諮問会議の議長でもある。15年12月の資料には、既に愛媛県今治市に獣医学部を造る計画が明記されていた。県と市は10年前から加計学園による獣医学部新設を訴えており、関係者の間では「今治=加計」は共通認識になっていた。首相だけが知らなかったのか。

「にわかに信じがたい」ってすごいですね。そして、首相の言っていることが事実ではない、と思われても仕方がないという記録を書く。

 

 首相秘書官だった柳瀬氏が今治市の職員と官邸で面会したのかと問われ、「記憶にない」と言った記事に関して。

 まず、読売。 

 首相秘書官だった柳瀬唯夫経済産業審議官は、学園を誘致した愛媛県今治市の職員との面会について「覚えていない」と繰り返した。官邸入館記録などをさらに精査して説得力ある説明をすべきだ。

 入館記録見たらわかりますからね。その通りです。

 次、朝日。

 首相秘書官だった柳瀬唯夫氏は、15年春に今治市職員と官邸で面会したのではないかと野党議員に問われ、「記憶にない」と述べた。入館記録も「ない」と首相が答弁し、官邸のセキュリティーは大丈夫かと議員から皮肉られた。

 そうかあ、入館記録ないのか、って本当ですか?読売さん、入館記録ないって。その答弁知ってたから、もっと精査しろと書いたのね。  

 そして、この日の社説の締めくくりがとてもおもしろい。

 まず、読売。

首相は「国民の疑念を晴らすうえで、何ができるか真剣に考えたい」と語った。便宜供与がないことを説明するのは簡単ではない。政権全体で、踏み込んだ説明を尽くすしかあるまい。 

 無実を晴らすのは簡単ではありません。冤罪事件が難しいのはそういうことです。映画「それでも僕はやってない」で勉強しました。加瀬亮さんが痴漢冤罪をはらそうと必死にがんばりますが、有罪判決が下ります。読売のこの書き方「私はあなたを信じる。無実を証明するのは難しいけど、がんばれ」と聞こえますが気のせいでしょうか。

 朝日です。

都合の悪い「記録」が出てくるたびに、「記憶がない」でそれを否定しようとする。こんな態度をとり続ける限り、国民の信頼は取り戻せない。

 まあ、かたくなです。

 よく、読売や産経は右寄り、朝日は左寄りと言われます。記事もこれだけ違います。「新聞記者になりたい」という人多いでしょう。そういう人たち、就職活動のとき、「読売は受けるけど朝日は受けない(その逆でもいい)」ということなのでしょうか。  

 女性アナウンサーが自身の就職活動をふりかえって「全局受けてフジ(これもこのさいどこでもいい)だけ受かって入社した」と話していたのを聞いたことがあります。

 テレビはまだいいとして、新聞は社によって考え方が大きく違います。読売色や朝日色は必ずあり、読売ではおそらく安倍さんをあからさまに批判する記事は書けないでしょう(朝日もまた逆に)。

 22歳の若者なら、「ジャーナリストになりたい。新聞社、全部受けます」という人が多いと思うわけです。朝日に入った人が朝日的な記事を書くのか、朝日のような考えの人が朝日を希望して入社し、朝日的考えをさらに研ぎ澄ましていくのか(もちろんここも朝日でも読売でも産経でもいい)。

   

 最後に社説、記事を掲載します。

 まず読売。お題は「衆院閉会中審査 政権の信頼回復につながるか」

「衆院閉会中審査 政権の信頼回復につながるか」

 安倍政権の信頼を回復するには、様々な疑念に対して、首相や閣僚が丁寧な説明を積極的に続けることが欠かせない。

 安倍首相が衆院予算委員会の閉会中審査で、加計学園の獣医学部新設への関与を改めて否定した。友人の学園理事長から「働きがけや依頼はなかった」とし、「個別の案件に指示することは全くない」と語った。

 一方で、「私の友人が関わることだから、国民から疑問の目が向けられるのはもっともだ。今までの答弁はその観点が欠けていた」と反省の弁を述べた。

 内閣支持率の低下に関して「私の答弁の姿勢についての批判もあろう」とも語った。首相は従来、野党の批判に「印象操作だ」などと反論することが目立ったが、この日は終始、低姿勢だった。

 問題の焦点は、国家戦略特区による獣医学部新設を巡って、加計学園げの便宜供与があったかどうかだ。複数の参考人が答弁したが、行政の違法性を示す明白な事実は指摘されなかった。

 前川喜平・前文部科学次官は、昨年9月に和泉洋人首相補佐官から早急な対応を求められたと改めて語った。和泉氏が「総理は自分の口から言えないから、私が代わりに言う」と述べたという。

 和泉氏は、この発言自体を否定したうえ、規制改革全般について「スピード感を持って取り組むこと」を求めたと反論した。首相と理事長の友人関係を認識したのは今年3月だったと述べた。首相も、学園による学部新設申請を知ったのは今年1月だと説明した。

 首相らの発言は不自然ではないか、との見方もあるが、事実なら、首相の友人を優遇したという批判は成り立つまい。

 和泉氏ら首相官邸スタッフが各省庁に対し、規制改革を急ぐことを求めるのは理解できる。その際は、一部地域や業者を不当に特別扱いしたと取られぬよう、細心の注意を払う必要がある。

 疑問なのは、政府側に依然として「記録がない」「記憶がない」との答弁が多いことだ。

 首相秘書官だった柳瀬唯夫経済産業審議官は、学園を誘致した愛媛県今治市の職員との面会について「覚えていない」と繰り返した。官邸入館記録などをさらに精査して説得力ある説明をすべきだ。

 首相は「国民の疑念を晴らすうえで、何ができるか真剣に考えたい」と語った。便宜供与がないことを説明するのは簡単ではない。政権全体で、踏み込んだ説明を尽くすしかあるまい。

次は、同日の朝日の社説です。タイトルは「特区の認定白紙に戻せ」

 「特区の認定白紙に戻せ」

 安倍首相の「腹心の友」に便宜を図るために、公正であるべき行政がゆがめられたのか。

 首相が出席したきのうの衆院予算委員会の閉会中審査でも、疑念が晴れることはなかった。

 内閣支持率の急落と相次ぐ選挙での敗北を受け、低姿勢で臨んだ首相だが、肝心な点になると、政府側の答弁はあいまいな内容に終始した。約束した「丁寧な説明」にほど遠い。

 このまま加計学園による獣医学部の新設を進めても、多くの人の納得が得られるはずがない。国家戦略特区の認定手続きをいったん白紙に戻し、プロセスを踏み直すべきだ。

 首相は、加計学園が特区に手を挙げていること自体、知ったのは、学園が事業主体に決まった今年1月だと答弁した。

 にわかに信じがたい。

 首相は特区諮問会議の議長でもある。15年12月の資料には、既に愛媛県今治市に獣医学部を造る計画が明記されていた。県と市は10年前から加計学園による獣医学部新設を訴えており、関係者の間では「今治=加計」は共通認識になっていた。首相だけが知らなかったのか。

 資料が作成され、審査が進んでいる間も、首相は学園の加計孝太郎理事長と会食やゴルフを繰り返していた。首相は親密な間柄を改めて認めた。2人の仲で、特区の件は話題にすらならなかったのだろうか。

 きのうの審議では、首相側の思惑とは逆に、「加計ありき」を疑わせる新たな事実が明らかになった。昨年11月、諮問会議が獣医学部の規制緩和を決める前日に、文部科学省が加計学園に対し、さまざまな助言をした文書が残されていることを、松野文科相が認めたのだ。

 この「優遇」の理由についても説得力ある説明はなかった。

 加計理事長や今治市の関係者に確かめたいことは多い。官邸や内閣府とどんなやり取りをしてきたのか。なぜ事業主体に決まる前から、予定地のボーリング調査を開始できたのか。国会でぜひ説明してもらいたい。

 きのうも政府側からは「記憶にない」「記録がない」が連発された。首相秘書官だった柳瀬唯夫氏は、15年春に今治市職員と官邸で面会したのではないかと野党議員に問われ、「記憶にない」と述べた。入館記録も「ない」と首相が答弁し、官邸のセキュリティーは大丈夫かと議員から皮肉られた。

 都合の悪い「記録」が出てくるたびに、「記憶がない」でそれを否定しようとする。こんな態度をとり続ける限り、国民の信頼は取り戻せない。