以前、こんな記事を書きました。
7月26日の朝日新聞朝刊に「百歳近い人が書いた本がたくさん本屋にならんでいます」という記事が出ていました。こういう本をわたしは「仙人本」と名付けたのですが、世間では「アラハン本」と呼ばれているようです。「アラハン」意味わかりますか?「アラサー」「アラフォー」の「アラハン」だって。
7月26日の朝日新聞です。
「アラハン人生 年輪の重み」
高齢の筆者が人生をつづる本が売れている。出版取次大手が発表した今年上半期のベストセラー1位の佐藤愛子著『九十歳。何がめでたい』(小学館)など、近年のベストセラーには高齢の筆者が目立つ。なぜなのか。
この記事に出てくるアラハン本の著者と題名、年齢です。
『100歳の精神科医が見つけた こころの匙加減』高橋幸枝(100歳)
『くじけないで』柴田トヨ(98歳)
『ひとりじゃなかよ』西本喜美子(89歳)
『おばあちゃんはファッションモデル』渡久地恵美子(94歳)
『置かれた場所で咲きなさい』渡辺和子(85歳)
『103歳になってわかったこと』篠田桃紅(103歳)
『好奇心ガール、いま101歳』笹本恒子(101歳)
『高野山に生きて97歳 今ある自分にありがとう』添田清美(97歳)
『99歳からあなたへ いつまでも変わらない大切なこと』吉沢久子(99歳)
9冊紹介されていました。
この記事では、アラハン本のブームの起こりと流れについてきっちり書かれています。
まず、このブームの始まりについて。
おばあちゃん本に金の鉱脈あり――。各社がそう気づいたのは、渡辺和子著『置かれた場所で咲きなさい』(幻冬舎)だった。
「この本が起点でした」と第二編集局長、鈴木恵美さん(44)は振り返る。初版は1万部。女性客が多い都内の書店に並べただけで売れた。読者から届く感想のはがきは今や6千通に。「あとにもさきにもない」という反響だ。
この手の本を「アラハン本」と名付けたのは、幻冬舎の鈴木さんという方だそうです。
幻冬舎の鈴木さんは、これらを「アラハン本」と呼ぶ。アラウンドハンドレッド、つまり100歳前後の著者による本だ。「80代でも著者にはまだまだ若い。70代では若すぎる」。読者は60~80代の女性が中心。「本で何かを知ろうとする最後の世代。生き方に迷った時、本屋を訪ねる。ニーズは今後もあると思います」
「80代でも著者にはまだまだ若い。70代では若すぎる」とあります。90代で本が書けそうな人を探すのは大変だったことでしょう。
老人雑誌も創刊されています。
14年創刊の雑誌「つるとはな」は、70歳以上ばかりが登場。表紙の多くを高齢の女性が飾ってきた。編集長の岡戸絹枝さん(62)は「人生の先輩に会って話を聞きたい」という思いで仲間と創刊した。英国でボランティア活動を続けてきた81歳。ハイヒールをはきこなす73歳。「自律した生活や迷いのない行動。ふりきれている考え方に共感します」
今から20年前、『「サルまん」サルでも描けるマンガ教室』というマンガがヒットしました。マンガ家になるためのハウツー本をとことん突き詰めて書いたマンガです。
この『サルまん』によると、「一昔前、マンガは子どもの読み物だったが今では大人も読んでいる」、「今読んでいる大人もあと数十年後には老人になる。老人マンガブームが必ず来る」とし、「『老いらくの恋』や『死の恐怖』などがテーマのマンガが出てくる、老人向けコミックも出るだろう」予想していましたが、案外あたっています。
これらアラハン本の読者は60~80代の女性だそうです。この読者の感想を本の帯につけて売ります。こんな感想です。
「前向きに生きることの大切さに気づかされました」(74歳女性)
「うんうんとうなずきながら一気に読みました」(84歳女性)
いくつになっても学ぼうとする姿勢を見習いたいものです。書き手もさることながら、いくつになっても人生を向上させようと本を手に取る読み手もすてきだな、と。
ブームはいろいろとめぐるようで、
1990年代は女子高生ブーム、00年代はオネエブーム。「社会の周縁にいる人たちの言うことに世間は同調する。今はそれがおばあさんなのです」
だそうです。
ちなみに、さきほどの本の売り上げランキングは、
一位 『置かれた場所で咲きなさい』渡辺和子 230万部!
二位 『くじけないで』柴田トヨ 181万部!
三位 『九十歳。何がめでたい』佐藤愛子 90万部
となっています。
以前書いた『知的な老い方』の外山さんも93歳。アラハン本です。