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信頼関係の築き方 『負けを生かす技術』野村克也

 

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 人を教えるって難しいことだと思っています。最近テレビで「厳しい先生が子どもを指導する」というような内容の番組が放送されていました。どうも素直に受け入れられないんですよ。どこの学校にも一人はいる体罰まがいの先生。なぜ殴る、なぜ怒鳴る、なぜ言葉遣いがそんなに悪い、わたしはいつも思ってました。先の番組で特集されていた先生は、おそらくしっかりした方なのでしょうけど

 にこにこ褒めていればいいのか、と言われるとそれも違うと思います。だったらどういう先生がいいのか、それが今回の話です。

 「学びは学習者に委ねられている」。わたしの好きな言葉です。「教えてやる」と言われても、「お前さんに教わることなんかないよ」と思われたらアウトです。

 たとえ同じ内容の指導をされても、「あなたの言うことなら聞く」ということ、けっこうあるでしょう。この「あなたの言うことなら聞く」関係が信頼関係といえるのではないかと思います。いくら正しいことを言っていても、この信頼関係がなければ効果なしです。

 野村克也さんは『負けを生かす極意』で、指導者の心構えについてこう書いています。

 選手と監督との関係性について

内川や松田、中田らが「勝って小久保監督を胴上げしたかった」とコメントしていたところを見ると、監督と選手の間で信頼関係は築かれていたのだろう。「物は万物の基を成す」というが、人を生かす、育てる、使うことは全て「信」が基になっている「信」とは「信頼・信用・自信」であり、「信」は人間の基になる。人間は「信」なくして何事も始まらない。

 信頼関係を築くための根本です。野村さんの言うこと、ただの抽象論ではありません。この人、本当に頭がいい。具体的で実践的です。

 感情的な起用法は、選手にとってマイナスでしかない

(阪神の金本監督が、ピッチャーの藤浪に懲罰的な意味合いを込めて、161球投げさせたという件について)

 どうかしている。確かに藤浪は立ち上がりが悪く、試合開始早々に四球を出すことも珍しくない。だが、そのことが技術的な欠点だというのであれば、どこをどう修正すればいいのか、投手コーチと話し合って、練習で解消していけばいいはずだ。しかし、四球を出すこと自体が彼の心に問題があり、野球に真剣に取り組んでいない態度の表れだというのなら、本人を諭して、場合によっては2軍に落として鍛え直せばいい。それが本当の懲罰というものだ。

 だが、金本はどんなに失点を積み重ねても続投させるという懲罰方法を選択した。これはあまりにもいただけない。私なら藤浪を続投させるのではなく、精神面を正すことをしただろう。本人を直接呼んで、二人きりでじっくり話し合う。藤浪は高校時代、甲子園で春夏連覇を達成し、プロ入り後も3年連続で2桁勝利を挙げている。自分なりの調整方法というものもつかんでいるのだろうが、その一方で若くして実績を残しているために、野球の奥深さに気づかず、「プロはこんなものか」と甘く見ている部分があるかもしれない。

 藤浪は欠点もあるが、まだまだ投手として成長していける。そこで、彼の課題について苦言を呈しつつ、それでいて「こうした欠点さえ克服すれば、お前さんは球界を代表する投手になれるぞ」とプライドをくすぐる言葉をかけてあげるのが、彼にとって効果的な方法ではないかと見ている。

 こうして、監督の考えを余すところなくすべて伝え、それを本人がどう受け止めるのかが肝心だが、真摯に反省しているのであれば、また一からやり直せばいい。だが、本人が監督の話にどうしても納得できないのであれば、一度2軍に落とし頭を冷やす時間をつくるのもいい。

 信頼関係を築くためには、「相手のことを認めながら対話する」これにつきると思うのです。「お前には力があるんだ、今のままじゃもったいないぞ」と声をかける。

 先の番組についてです。野村さんはどこにでもいるスパルタ先生ではなさそうです。その考え方、指導方針に強く共感します。野村さん、緻密な野球理論を選手に押し付けている方なのかと思ったら違いました。前も書きましたが、この人は本物です。 

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