読書生活 

本もときどき読みます

「これ、思いっ切り握ってみろよ」と彼はわたしに言った。

 おもしろいつぶやきを見て、一日中笑いました。これです。

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 わたしも思い出しました。20年前の強烈な上司とのやりとりを(初のスクリーンショットです。大丈夫かな)。勝手にのせて、フミコさんすみません。

 

 20年前の飲み会の席でした。ある酔った上司が、ぐっと握った自身の右拳をわたしの眼前に突き出しました。彼の親指は勢いよく天井に向かって立っています。そして、「これ、思いっ切り握ってみろよ」とわたしに言いました。

 

 わたしは、彼の反り立っているソレを遠慮がちに握りました。すると、彼は自身の左手をわたしの手を包み込むようにあてながら「もっと強く」と強く言いました。

 わたしは、力を入れて彼の熱く太いソレを握りました。処女のように震えるわたしに、彼は今度は優しく「左右に振ってみろ」と言いました。繰り返しますが「左右」です。わたしはもう一度彼のソレを力一杯握りしめ、言われた通りそのまま左右に振りました。平然としている彼を見て、わたしはさらに激しく振りました。ところが、彼のソレは微動だにしないのです。付け根の関節部分がぐらつくはずなのですが、彼のソレは根を張った大木のようにびくとも動きません。

 

 驚くわたしに「これが、男ってもんだよ」と彼は煙草をくゆらせました。そして、「肝心なのはこの力だ。これがぐらぐらするようじゃ男として失格だ。これは鍛えてどうにかなる問題じゃない。鍛えてもこの部分だけはどうしようもない。なんであんな男がモテるんだろうっていう奴いるだろ。そういう奴は見た目がひょろっとした優男でも、ここが違うんだよ。びくともしない」と言いました。この人は何を言っているんだろう、と思いきり引きました。ただ、この職場と全く関係ないパワーを誇示する彼に、不思議な憧れをもちました。

 

 バキの花山を彷彿とさせるくらいの圧倒的な暴力が香る彼の握り拳と太い親指。彼のあの親指なら、トランプの束を引きちぎったり人間のこめかみに穴を穿ったりすることが可能かもしれない、ほんとにそう思いました。

 

 あれから20年。わたし自身のソレはどれだけ力を入れても本のページをめくることくらいしかできません。

 

 ハラスメントの話をしようと思いましたが、何の話だ、これ。

 彼はその後、十分余力を残した50歳で辞めました。今何をしているか知りませんが、送別会でわたしに向かって親指を立てにやりとしたニヒルな口元を、わたしは今でも覚えています。

 

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