読書生活 

本もときどき読みます

梶井基次郎と猫

猫の肉球に魅せられて 

 うちに猫が来てからもうすぐ半年になります。 

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 猫は美しい。1日見ていても飽きません。丸みを帯びた流線型のフォルムに、隙も無駄もない香箱スタイル。整った顔立ちに滑らかな尻尾。うーん、たまらん。

 中でも肉球が一番のお気に入りです。唯一毛が生えていない部分で、ふっくらとやわらかくひんやりとした感触。この肉球を存分に堪能したい、いっそのことその肉球で顔をふみふみしてほしい、そう願っています。

 猫に顔を踏まれたい、顔をふみふみしてもらいたい、む?この感覚、どこかで読んだことがある!と本棚を探すこと丸一日。見つけました。その名は梶井基次郎。

梶井基次郎って誰?

 1901年大阪生まれ。肺を患い、1931年にわずか30年の生涯を閉じた天才作家です。はじめて読んだとき、「文字の組み合わせでここまで流暢にこんなにも激しく命を表現することができるのか」と衝撃を受けたのを覚えています。『檸檬』とか聞いたことありませんか?

 梶井基次郎の短編の中に『手紙より』というものがあります。その一節に、わたしと全く同じ、肉球に踏まれたい願望をもつ男が出てきます。おそらく梶井さん本人のものです。引用します。

 僕は誰も恐らくこんなことはやったことがないだろうと思うことを一つ君に伝授しよう。それは猫の前足の裏をあらかじめ拭いておいて、自分は仰向けに寐(ね)て猫を顔の上へ立たせるんだ。彼女の前足がおのおのこちらの両方の眼玉の上を踏むようにして、つまり踏んでもらうんだな。もちろん眼は閉じている。すると温かいような冷やっこいようななんとも云えない気持ちがして、眼が安まるような親しいようなとてもいい気持ちになるんだ。

 100年前の天才作家もわたしと同じように「猫に顔を踏まれたい」と思っていたのですよ。「誰も恐らくこんなことはやったことがないだろう」と言ってますが、基次郎、わたしもそう思ったんだ!

 え?梶井基次郎の才能が伝わらない?そんなあ。

 梶井基次郎には、猫を描いた伝説の『交尾』という作品があります。内容は題のまんま、猫の「交尾」です。こちらの筆力が凄いのよ(って何目線だ)。

 梶井基次郎については思うところがあるので、また近日書きます。 

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