読書生活 

本もときどき読みます

加齢による視覚の発達。

 先日、こんな記事を書きました。「近眼と老眼がすすみ、いろんなモノが見えなくなって悲しいよ、お米のつやや、女の子の肌のハリを見ることができなくなってトホホだよ」という記事です。 お時間がある方はどうぞ。 

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 先日、家人が運転する車の助手席から湘南の海を見ました。雨の黄昏時、水滴と蒸気で厚く曇ったガラス越しに見る海は、雨に煙り、ついでに眼鏡も曇り、ぼやけて見えました。海を見ているのか、モルタルの壁を見ているのか、判然としないほどの風情でした。 

 

 落ち込んでばかりいても仕方ないので、ポジティブに考えることにしました。これを視力の衰えととらえず、むしろ不要な情報をさえぎるフィルターが発達したと考えることにします。

 

 美人をカメラで写すときは、紗をかけて、わざとぼかしを入れ、直射日光のようなギラギラした照明を避けますよね。美は薄日や残照の中で映えます。明瞭すぎると美は半減するのです。

 

 月は遠くから離れて見た方が美しいものです。宇宙飛行士は近くで見る月の美しさを語らず、遠くから見る地球の美しさを讃えます。どんな美人も1㎝の距離から見れば美人には見えないでしょう。美を味わうには距離と暗さが必要なのです。場合によっては御簾越しであったり、すりガラス越しであったり、照明は星明りないし漆黒の闇である必要もあります。

 でも、年を取ると、わざわざ照明を消したり、すりガラスを用意する必要はなくなります。努力しなくても適切なレベルに調節され、ぼんやりとしか見えなくなりますから。

 

 家人の顔にも紗がかかりぼかしが入ります。ほうれい線やシミが消え、黙ってさえいれば出会った20年前の頃のようにかわいく見えます。永作博美に似た愛くるしい子だった頃の面影があります。人間ドックが近いようで、トイレには採便容器が数日前から起きっぱなしですけど。