当て馬とは?
広辞苑第4版によると、
①牝馬の発情を検査し、あるいは促すための牡馬。
②転じて、優勢な者を牽制するために、仮に押し立てた者。
当て馬にする 自己の野心を隠しておき、表面的には他の人にその位置に推す。
②は知ってました。ただ、転じる前の①「牝馬の発情を検査し、あるいは促すための牡馬」がこの言葉の語源なんですね。だけど、牝馬の発情を検査し促すって具体的には何をするか知ってますか?
牝馬の発情の検査をする馬とは何をするのか。
競馬の種付けの話です。
競走馬の種付けは非常にお金がかかるもので、現役時代に輝かしい実績を持った牡馬(ぼば、と読みます。オスウマのことです)の種をもらうには1回に何百万円もかかります。ちなみに日本最高値の種馬はディープインパクトというそりゃあ強かった馬で、そのお値段は1回3000万円だそうですよ。
1回種付けするだけで何百万円ももらえるだなんて、なんとまあ、羨ましい話と思うじゃないですか。牝馬(ひんば、です。メスウマのことです)のオーナーにしてみれば、優秀な種をつけてもらうために、何千万円も払ってさせていただくわけです。ですから、種付け(交尾)に失敗などは許されません。
交尾の確率を高めるために人間が考えた方法とは
人間の男性でも、調子の悪い時はうまくいかない時もありますが、馬でもたまにはそういうことはあるそうです。それに馬とはいえ哺乳類ですから、相性が合わない相手もあるでしょう。牝馬だってそうです。
縛り付けられた牝馬に前戯を施す
そこで、人間はとんでもないことを考えました。牝馬にあらかじめ別の牡馬をあてがい、受け入れ準備OKの状態にしておくのです。この時、牝馬は縛り付けられています。
あてがわれた牡馬は牝馬とやれる(失礼!)と思っていますから、もう大喜びです。そして、人間でいうところの前戯のような行為を行います。それで牝馬も興奮しまくり、「さあ、いつでも来て!」という状態になります。牡馬の興奮度も最高潮です。牝馬の後ろから乗りかかろうとします。
結合の瞬間に首にかかった縄を引っ張られ、引きはがされる
が、しかし、この時、無情にも人間たちが彼の首にかけられたロープを引っ張り、牝馬から引きはがす。牝馬と結ばれる直前に彼女と引き離される牡馬は悲鳴をあげます。この悲鳴が聞いてはいられないほど悲痛なものなのだそうです。
そして、牡馬がいなくなったところへ、本命の牡馬が悠然とやってきます。牝馬はさっきからもうとんでもない状態になっています。それを見た本命の牡馬は一瞬にして興奮します。そして、牝馬に乗りかかって結合、というわけです。
本命牡馬の行為自体はわずか30秒という早業です。牝馬の妊娠確率は70%だそうです。
なんと悲しい運命。当て馬って聞いたら、このことを思い出してみましょう。