読書生活 

本もときどき読みます

2020読んだ本 ベスト10

読書ブログなのに、書評を一つも書いてない。

 たくさん読みましたよ。Yamaアンテナに引っかかった本はたいてい手に入れて読みました。ただ、感想を書く場がここにあるというのに、まったく書かずに1年が終わってしまった😨。これは、このブログ「読書生活」の危機だ!何としても書く。

 ということで、本棚をもう一度チェックしてみると、今年読んだ本は多分42冊。多分って、だってそんなもんでしょ。分からないんですよ。2019の年末に読んだのか、それとも2020の1月に読んだのかって。

 それをここに全部列挙してもつまらないので、ランキング形式でまとめてみようと思います。ランキング形式だってつまらない?そんなこと言わないで。

第10位 「炎の武士」 池波正太郎

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 池波正太郎の時代小説か、難しそうだ、と思った人、全く違います。これ、小学生向けの本です。

 みなさんは、鳥居強右衛門を知ってますか?え?知らない?大丈夫、知らなくても生きていけるから。

 ただ、知ると、人生にハリが出ます。

 この人です。長篠の戦いの2日前に非業の死を遂げた男の中の男、鳥居強右衛門とはこいつだ!織田信長がその死を惜しんだ足軽とはこいつだ!

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 詳しく知りたい人は、Wikipediaで調べてほしい。だってまだ10位だからね。先は長いのだ。

第9位 「レベル7」  宮部みゆき

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 ミステリー好きの奥さんにすすめられた本です。彼女は常に謎を解きます。謎がなければ、そこに謎を無理やり作り、勝手に解いています。湊かなえ先生を崇拝しておりまして、普段はすごく優しいのに、わたしがあさ〜いミステリーの感想などポロッとこぼすと目の奥が暗くなります。普段はバキバキの目で脱出ゲームをしています。わたしの携帯で「お」と入力してみろ、と言います。「おっぱい」と履歴に出ないか確認するのです。かわいくて時に恐ろしい人です。

 以前読んだ「火車」がおもしろかったので、いくつか彼女にすすめられたミステリーの中から、宮部みゆき作品を読んでみた、というわけです。

 知らない部屋で目が覚めた。自分の名前も思い出せない。え?知らない女性が寝てる。手がかりを求めて部屋を探すと5000万入ったトランクを発見。トホホ…。

 こんな感じで始まる謎解きです。さあ、君にこの謎が解けるか!(こんな感じで書くと、最後まで本当に読んだのか、最初の数ページじゃないか、と彼女に疑われますが、読みましたよ)。

第8位 「哲学入門」 戸田山和久

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 名古屋大学の先生です。専攻は科学哲学。科学と哲学って正反対のような感じがするでしょう。

一般的に

科学

→現実的で数値で測れそうなもの、理論的なもの。

それに対して、

哲学

→こうなってるから信じなさい的なもの。

そんな感じで周知されている気がしますが、いかがでしょう。

 本書を読むと、その概念がぶち壊されます。概念を壊されると気持ちがいいものです。戸田山先生の「科学的思考のレッスン」もおすすめです。

 アメリカの教科書には、人類誕生のページに、ダーウィンの進化論と、アダムとイブの創世記が並列で記述されているのだそう。興味深くないですか?

第7位 「アーロン収容所」 会田雄次

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 悲惨な戦争体験がつづられている…。そういう戦争ドキュメンタリーではありません。ヨーロッパ史専攻の京大教授が戦争に行き、収容所で体験したもの、見聞きしたことを、アカデミックな視点から記述しています。

 彼は(座学で知ってはいたものの)、イギリス人のアジア人に対する差別を凄まじい屈辱として胸に刻みます。イギリスの女性は、部屋の掃除をする自分の目の前で、全く無造作に服を着替えます。おっぱいをぷるんと出して。なぜだか分かります?日本兵のことを人間だと思ってないわけですよ。わたしも愛猫の夏♀の前で着替えても何とも思いませんからね。

 駄賃がわりのタバコも手渡ししないのです。目を合わせることなく、部屋の片隅に投げる。「拾っとけよ」と言わんばかりに。この屈辱たるや。

 ちなみに愛猫の夏です。昨日の夜、箱からチュールを盗み出し噛みまくった悪戯っ子です。

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第6位 「楢山節考」 深沢七郎

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 姥捨山伝説の話です。食い扶持を減らすために老人は山に捨てる。そういう習慣は、つい少し昔まで日本の至る所にあったようです。これはその中の一つ。あまりにリアルな描写なのですが実話なのか?

 老人が戻って来れないように、その山は(老人を置き去りにするポイントは)奥の奥。そこに至るまでの道のりは、マル秘であり、姥捨(楢山まいり)が行われる際に口頭により歌の形で村の衆から伝えられます。

 年老いた母は、息子たちのことを思いやって、楢山まいりを前よせようと急かすわけです。もう行こう、と。心優しい息子はそんなことできず、結局楢山まいり当日となります。

 主人公は母を背負いそこに向かう。そこまで行くの大変ですから、途中の崖から突き落として帰ってくる奴も多い中、彼は軽い母を大切に慎重に背負い、一歩ずつそこに向かう。そして、いざその場に着いた時に母がしたこととは…。

第5位 「夢酔独言」 勝小吉

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 あの勝海舟のお父さんの自伝です。かなり破天荒な親父です。勝海舟の小さい時はこんなだったよ、という話ではなく、小吉、お父さんの自伝です。イチローのお父さんが書いた「イチローの育て方」的な本ではなく、イチローのお父さんが書いたイチローのお父さんの自伝です。

 何が面白いんだ、と思ったでしょう。自分はどうしようもない人生を送ってきた、自分みたいにならないように反面教師として書いとく、みたいな感じでかなり、いや、相当いっちゃってます。

 5歳の時、喧嘩して、相手の顔を石で殴りつける。
7歳の時、2〜30人にボコボコにされ、切腹しようとして止められる。悪さばかりするから、多くの人に嫌われる。縛られ天井に吊り下げられたら、その下で鍋するからしょんべんかけまくる。
 14歳の時、家の金を盗み大阪に家出。途中で泥棒に全て盗まれ、乞食同然に江戸に戻る。野宿、泥棒、物乞いなどなど。途中、箱根で野宿中がけから落ち金玉を打って気絶する。その後、腫れて膿む。4カ月後、江戸に帰るが金玉の事後が悪く2年ほど家でじっとする。息子の海舟がガキの頃、野良犬に金玉を噛まれ生死のふちを彷徨い…。

 金玉金玉って、盛ってるだろ、と思いましたか?本当なんですって。おもしろいから読んでみて。

第4位 「サヨナライツカ」 辻仁成

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 何ですか?辻仁成のサヨナライツカが恥ずかしいと言うのですか!誰だって人は恋したいものなのですよ。甘く切ない、ではすまない、気が狂いそうになるような恋を。こういう恋をした人は、幸福だと思うのですよ。

 ゲーテが「若きウェルテルの悩み」を書いた時、言ってたよ。「もし生涯に「ウェルテル」が自分のために書かれたと感じるような時期がないなら、その人は不幸だ」と。ちなみにウェルテルは叶わぬ恋に絶望して拳銃自殺するのだ。この本が売れてドイツでは恋に悩む若者の自殺者が続出する。いいか、この本、250年前に書かれたんだぞ。

 は!話がそれました。気が狂うほど愛していた彼女とわかれ、20年後、奇跡の再会を果たす2人。さあ、読むのだ。そして、あの頃を思い出そう!

 僕?すごく美味しいハンバーグを作る奥さんがそばにいるから、ゲーテの言う不幸、ではないです。

第3位 「日本文学史序説」 加藤周一

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 サヨナライツカとの落差が凄い。雑食なんですよ。東大医学部を卒業した後、古典文学に傾倒し、そちらの教授となる、まあ、天才というのでしょうなあ。内容は、日本の文学、思想はどのように生まれ、変遷していったのか…というものであります。日本人は、新しい何かをもつ時、以前の文化を捨てるのではなく、とっとく。自然、多様性が生まれやすい。摂関時代の「もののあはれ」、鎌倉時代の「幽玄」、室町時代の「わび」「さび」、徳川時代の「粋」…。

 多様性だと?この同調圧力の重苦しい日本に多様性だと?日本の同調圧力はどこから来たのかというと…。気になる人は、読むしかないのだ。硬い本だ。しかも上下巻だ。

 噛みごたえが半端なく、奥歯が数本やられましたが、今となってはいい思い出です。

第2位 「インパール」 高木俊朗

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 太平洋戦争で最も無謀な作戦と言われた「インパール作戦」その全貌が分かる本。

 

 あまりに無謀すぎるこの作戦。何ヶ月も食糧もない中、密林を歩いた日本軍に対し、イギリス軍は完全武装で待ち構えているわけです。こちらの作戦は全て解読されているのです。

 無理だと分かっていながら、命令が出た以上戦わざるをえない連隊長。多くの部下が死ぬ中、藁をもつかむ思いで応援を乞うと「食糧がないから出せない」とのこと。

 怒りに震えた連隊長の台詞を引用します。この記事、初の引用。

「今になって、糧秣不足で出られないとは何事ですか!師団は作間(連隊長)の隊を見殺しにするつもりか。糧秣不足と言うが、作間のところには糧秣があるとでも思っているのか。」

「作間の兵隊は満足に食えなくとも突入したぞ。それを今になって、糧秣が不足したから突入しないとは、もってのほかだ。こんなばかな戦さがあるか!作間の兵隊は、ビシェンプールで全滅したんだ!」

 作間連隊長は、はらはらと涙を流し、声を震わせて叫んだ。

「今すぐ出せ!どんな方法をとっても、今すぐ出してくれなければ、作間の両大隊は犬死になってしまうぞ!」

 

 さっき、日本人の多様性について、そして同調圧力について触れたでしょう。どうなんだろうなあ、江戸もガッチガチの封建制でしたが、あの時代にはその中での自由(貧富はあれども)は案外あったからなあ。明治に同調圧力の素地が生まれ、昭和20年までに花を咲かせてこっぱ微塵も、その燃えかすの中で生き残ったその種がいつの間にか芽を出し、この国に蔦のように絡まり始めてる…。個人的にはそう思うのですが。

第1位 「悟浄歎異 悟浄出世」 中島敦

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 第1位は、中島敦の短編小説から。「自分は何のために生まれてきたんだろう」「自分なんてどうしようもないクズだ」と他人を見て悩んでる人におすすめです。

 そもそも、自分なんてどうしようもない、と思わない人間なんているのだろうか。程度の差こそあれ、みんなが抱えている悩みなのではあるまいか。 

 この沼にハマると、出るのに時間がかかるのだ。そういう人にはこの本を読んでほしい。脱出不可能だと思えた沼が、それほどでもなく感じてくる。沼が消えるとか、温泉のようにいこごちがよくなる、とかそんな都合よくはならないが、やってやるか、という気にはなる。この本で救われた人はかなりいるんじゃないか、と思うんだよね。僕?もちろんですよ。

 すごく短い短編です。あえて引用はしません。

 

 雑食の僕ですが、なんだかんだ言って僕にとって快よい本って言うのは、

「ああ、ここにも自分がいる!」と思わせてくれるものなんですよね。1位の中島敦の悟浄はまさに自分そのもの。中島敦って33で死んでます。残念だ。もう、彼の新作を読むことができないなんて。

 

 長くなりました。最後までお読みいただきありがとうございました。よいお年を。