読書生活 

本もときどき読みます

こだま事故

ある夜、小田原駅の本屋で立ち読みをしていたら、外の様子が騒がしいので出てみると、救急車やパトカーが何台も止まっていた。駅員やら警察官も大勢いる。

詳しいことは帰宅してから知った。小田原駅で人身事故があったようだ。新幹線の線路内に女性が入り死んだらしい。

https://news.yahoo.co.jp/articles/bc311cd4bcfac7feb841344c496a2711ca66e7c7

過去に新幹線通勤を2年したことがある。当たり前だが新幹線はかなり速い。ひかりやのぞみの風圧で、ベンチに座りながら文庫のページを何度ももっていかれたことがある。

あの新幹線に飛び込んだなら、体は一瞬に吹き飛び死体の回収すら不可能ではないか?ベンチで読書などしていたら、風どころか血の雨が降ってきていたことだろう。あの駅は市道に近いので、外にまで一部が飛び、猫やイタチの餌になることも十分ありえる。かなりスプラッターで恐ろしい。

ネットでは、人に迷惑をかけるな、という死者に鞭打つ手厳しい意見がある。それに何千もの「いいね」がついているのを見ると、そっちの方が怖い。確かに予定を変えざるをえなかった人にとっては不愉快な出来事ではあるが、そんなにぶーぶー外野が言うほどのことだろうか。今のご時世、事故で遅れたことを言っても取り返せない用事や許されない現場なんてほとんどないんじゃないかな。番組収録だって謝って許してもらえるだろうし。大事な人の臨終に立ち会えないくらいじゃないか。

そういうところに👍を押す人は、死、というものを全く考えずに生きている健全な人なのだと思う。その健全さがうらやましい。自殺が頭の片隅のどこかにある自分など、その会ったこともないその女性に対し先を越された感が(なぜか)ある。

ただ、この文章を書くにあたり、ニュースをよく見ていたら、どうやらその新幹線は「こだま」だったらしい。みなさんご存知の通り、こだまは各停なので、小田原駅でも当然止まる。止まろうとしていたこだまにひかれるより、通過するひかりやのぞみに飛び込んだ方が確実に死ねる。進入してくる側にいるなら問題ないだろうが、逆方向なら下手したら生き残る。ひかりやのぞみなんてそれこそ数分に一本通過する。こだまなんて、30分に一度だから、あえてのこだま、だったのかもしれない。本当に死ぬ気があったのだろうか。わざわざホームのガードを越えて、線路に侵入し、こだまが来るのを待つ。うーん。

 

もしかしたら、誰かに止めてもらいたかったのかもしれない。そう考えると胸が痛い。