読書生活 

本もときどき読みます

陰々滅々

関東も梅雨入りし、まさに陰々滅々。

出張を忘れ、アロハなTシャツで出社する。こういう時のために常備してあったロッカーの中にも、替えのシャツがない。妻に連絡したら、出張先近くの聞いたこともないチェーン店を教えてもらった。「そこで買うしかない」と。早目に出社し捜索すること10分。妻が言っていたチェーン店を発見した。最も安い紳士シャツを選び、会計に行くと、近所のおばさまがレジ打ちをしていることに気付き途方に暮れる。

意を決して購入し、汚いトイレで着替えすると、隣の個室から強烈な排泄音がする。

出張先では、1番会いたくない時に決まって現れる輩がいた。弛んだ体をキツめのシャツに包み、社内の課題を自分がどれだけスマートに解決したか語っている。いたずらに長いだけで何の役にも立ちそうにない話を延々と聞かされた。私が唯一好感を持っている老紳士がいた。定年もそう遠くない小太りの先輩で、眼鏡の奥に申し訳なさげな小さな目をしている。彼はその輩にいつものように批判されていたが、完璧に受け流していた。まさに心ここにあらず。素晴らしい。

出張先の駐車場から出る時に、会社に出したはずの駐車券がきちんと処理されていなかったらしく、千円弱の支払いを命じられる。

会社のどこでも耳にするのは損をした話ばかりで、世の中全体が税務署の窓口になってしまったようだった。

低気圧のせいか、歯が疼くので数年ぶりに予約した歯医者に行く。支給品かと思われる安っぽいサンダルを引っ掛けると、自分が砂漠で彷徨う河童になった気分がした。歯医者も隣にいる若い女性も私を蔑むような表情で見ていた。

トイレの鏡を見ると、この世の苦悩を一身に背負ったような表情の中年の顔が見えた。これが私か。男の顔は履歴書と言うが、まさにそうだ。悲しくて泣けてくる。生きるとはそれだけで戦いだ。

 

私の救いは、愛する妻がいることだ。私の健康をいつも気遣ってくれる。先日、彼女の人間ドックの再検査に一緒に行った。問題なしだった。よかった。この人がいるだけで私の人生は報われる。それだけで充分なのである。