読書生活 

本もときどき読みます

ラーゲリより愛を込めて

 「ラーゲリより愛を込めて」を観に行きました。原作は辺見じゅんの「収容所からの遺書」です。「ラーゲリより愛を込めて」に映画の題名が変わっていたのは、主人公の山本さんが帰ってくるの?というところに着目させたいのでしょう。

 「ラーゲリより愛を込めて」に変えて大正解だと思います。原作とどこそこが違う、とか、二宮君がイメージと違うとか、いろいろなコメントが散見されますが、野暮です。

 原作は、史実を追ったものですが、そのような小説は得てして起伏に富まず、平坦なストーリーとなりがちです。しかし、この「ラーゲリより愛を込めて」は違います。史実はなるべく残して、人間を濃く描くことに成功しています。

 「僕は人間を辞めました」というセリフがあります。人間を辞めてただ生きる。そんな人ばかりの中、人間を諦めない山本さん。その山本さんに感化され少しずつ人間を取り戻す仲間たち。「ただ生きるだけじゃだめなんです。僕は山本さんのように生きるんです。」そう言ってハンストを起こす松坂君。

 奥様のモジミさんを北川景子さんが演じています。この方が号泣するシーンで、自分の意思とは関係なく胸の中に大量の空気が入ってきたのを感じました。体内に入ったその空気が全身の毛穴から出ていく。そのおかしな現象とともに目と鼻から大量の水が出ていく。

 僕の想像などおよびもしない過酷な状況に置かれたシベリア抑留。中学生くらいなら理解できると思います。日本人必見、などと大袈裟にいうつもりはありませんが、知らないより知っていた方がいい。130分強という短くない時間ですが、あっという間です。

 宮城や桜木は同世代でしたが、彼らは永遠の高校生。死ぬほど憧れたミッチー。なのに、スラムダンクは僕に響きませんでした。ずっと凪。エンドロールまでずっと凪。でも、スラムダンクの方が観客動員も多く、評価も高い。スラムダンクが変わったのではなく、僕が変わってしまったんでしょう。あれから30年、いろいろありましたから。

 郷土研究部員だったくせに、1人になると「左手はそえるだけ」なんていいながら、エアージャンプショットをしていた僕が俯瞰で見えます。

 僕は桜木にも流川にもミッチーにもなれない。でも、明日から、山本さんのように生きる。そう決めました。

 冬は、妻と温泉に行きます。モジミさんのような人です