談志の名言が深い。
立川談春の書いた『赤めだか』が、数年前ドラマ化されていました。ビートたけしが立川談志を怪演していて面白かったです。談春役は嵐の二宮くんでした。
この赤めだかには、談志の名言がいくつも載っています。昭和の芸人ですが、今を生きるわたしたちにも共感できるものばかりです。
- 談志の名言が深い。
- 新聞配達しながら修行したなんて、売れたあとで自慢になるぞ。
- 患う程、俺に気を遣え。
- 芸は盗むものだと云うがあれは嘘だ。
- 観客に勉強させてもらうわけではない。
- 型ができてない者が芝居をすると型なしになる。
- 本の一冊も読め、映画の一本も観ろ。
- お前に嫉妬とは何かを教えてやる。
新聞配達しながら修行したなんて、売れたあとで自慢になるぞ。
昔はな、新聞配達少年なんて、みんな貧乏人だったんだ。恥ずかしいから隠したもんだ。今はいい時代だから美談になる。17で家を出て新聞配達しながら修業したなんて、売れたあとで自慢になるぞ。よしんば売れなかったにしてもだ。縄のれんで一杯飲っている時のグチのネタにはなる。心配するな。どっちを選ぶかはお前次第だ。『赤めだか P29』
患う程、俺に気を遣え。
おい小僧、よく覚えておけよ。年が下でもお前が兄さんと呼ばれるのはな、お前が後輩に教えられることがあるからだ。形式だけの兄弟子、弟弟子なら、そんなものヤメチマエ。談秋に聞かれたことは、皆答えられるようにしとけ。そのための努力をしろ。靴なんか揃えてる暇はないんだ。前座の間はな、どうやったら俺が喜ぶか、それだけ考えてろ。患うほど、気を遣え。お前は俺に惚れて落語家になったんだろう。本気で惚れてる相手なら死ぬ気で尽くせ。サシで付き合って相手を喜ばせられないような奴が何百人という客を満足させられるわけがねえだろう。談秋、テメエもテメエだ。兄弟子に靴揃えられて黙って履こうとする馬鹿が何処にいる!『赤めだか P43』
芸は盗むものだと云うがあれは嘘だ。
よく、芸は盗むものだと云うがあれは嘘だ。盗む方にもキャリアが必要なんだ。最初は俺が教えた通り覚えればいい。盗めるようになりゃ一人前だ。時間がかかるんだ。教える方に論理が無いからそういういいかげんなことを云うんだ。『赤めだか P71』
観客に勉強させてもらうわけではない。
次に扇子だが、座布団の前に平行に置け。結界と云ってな、扇子より座布団側が芸人、演者の世界、向こう側が観客の世界だ。観客が演者の世界に入ってくることは決して許さないんだ。たとえ前座だってお前はプロだ。観客に勉強させてもらうわけではない。あくまで与える側なんだ。それくらいのプライドは持て。『赤めだか P72』
型ができてない者が芝居をすると型なしになる。
型ができていない者が芝居をすると型なしになる。メチャクチャだ。型がしっかりした奴がオリジナリティを押し出せば型破りになれる。どうだ、わかるか?難しすぎるか?結論を云えば型を作るには稽古しかないんだ。『赤めだか P118』
本の一冊も読め、映画の一本も観ろ。
俺は内容でお前たちと接する。俺を抜いた、不要だと感じた奴は師匠と思わんでいい。呼ぶ必要もない。形式は優先しないのです。俺にヨイショする暇があるなら本の一冊も読め、映画の一本も観ろ。勿論芸の内容に関する疑問、質問ならいつでも、何でも答えてやるがな。『赤めだか P134』
お前に嫉妬とは何かを教えてやる。
お前に嫉妬とは何かを教えてやる。己が努力、行動を起こさずに対象となる人間の弱みを口であげつらって、自分のレベルまで下げる行為、これを嫉妬と云うんです。一緒になって同意してくれる仲間がいれば更に自分は安定する。本来なら相手に並び、抜くための行動、生活を送ればそれで解決するんだ。しかし人間はなかなかそれができない。嫉妬している方が楽だからな。芸人なんぞそういう輩の固まりみたいなもんだ。だがそんなことで状況は何も変わらない。よく覚えとけ。現実は正解なんだ。時代が悪いの、世の中がおかしいと云ったところで仕方ない。現実は事実だ。そして現状を理解、分析してみろ。そこにはきっと、何故そうなったかという原因があるんだ。現状を認識して把握したら処理すりゃいいんだ。その行動を起こせない奴を俺の基準で馬鹿と云う。
立川談志は、所属していた落語協会の旧態依然としたあり方に疑問を持ち続けていました。そして、真打試験に自らが自信をもって送り出した弟子が落とされて激高し、そして落語協会を脱退しました。
当時の落語協会の会長は談志の師匠の柳家小さんでした。弟子が師匠に反旗を翻す。大騒ぎの中、会長という立場上、他に示しがつかないからと、小さんは談志を破門しました。
立川談志の生き方には賛否両論ありますが、その芸は誰もが認めるところ。一芸を極めた人の言葉は重いですね。