詐欺罪で手配中だった62歳の日本人女性がタイで逮捕された事件、インパクトありましたね。被害にあった方には気の毒でなりませんが、うちの職場はあの女性の話題で一時期盛り上がりました。
私の職場は、20代~50代までの幅広い年代の男女が日々汗を流しています。上司はいるのですが、実質この職場の秩序を守っているのは50代後半と思われるお局様です(Kさんとします)。年齢を直接お伺いしたことはありません。しかし、我が社は60歳定年制をとっているので、Kさんは50代後半だと思います。ゴミ捨て当番をさぼったり、先輩を立てなかったりといった無礼な若者を、このKさんが一喝する光景をよく見かけます。
今回のこの詐欺事件、新聞には出ていなかったように思います(出てたらすみません)。私はその事件のことを全く知りませんでした。先日、昼食中に若手女性社員からその事件について切り出され、初めて聞きました。「62歳の日本人女性が自分を38歳だと偽り、若いタイ人男性とお付き合いしていた」とのこと。もちろんその詐欺の内容も説明してくれたとは思うのですが、私の頭に全く残っていません。20以上もさばを読み、若い男とお付き合いする60歳、私の頭の中はそれだけです。
Kさんも同様だったようで、若手女性社員に「その62歳ってどんな感じの人なの?」と聞きました。その子は、スマホをかざしその女性の画像を私たちに見せてくれました。両肩をあらわにしたその女性の痛々しい姿に、私は絶句しました。
何か言いたげな顔をしているKさんを見て、この若手女性社員が「こんな女より、Kさんの方が断然若く見えますよ」ともちあげます。
「え?」と表情を崩すKさん。さらに、
「Kさんは、スーツスタイルがほんとにかっこいいですよね。何かしてらっしゃるんですか?」とたたみかけます。
「全然よ。週末ジョギングするくらい」とKさん。
あきらかにKさんの全身から、今までに私が見たことのないオーラが出ているのです。女性フェロモンとでも言うのかな。この若手女性社員の成長ぶりに驚きました。いつの間にこのような忖度力を身につけたのか、これなら出世も間違いなし、そう思いながら、彼女たちのやりとりを見ていました。
Kさんは、「やめてよ」などと言いながらも明らかに嬉しそうです。「私もまだまだいける」と思っているようにも見えます。こんなKさん見たことありません。
その子がさらに続けます。
「私が男だったら、絶対声かけちゃいますもん」
おい、それはないだろう、とおそるおそるKさんを見ると、まんざらでもない様子です。それを見たその子が、私の隣にいた若手男性社員に話をふりました。
「ねえ、そう思わない?」
すると、その若手男性社員が一言。
「相手の男は、絶対におばあちゃんってわかっていたけど、騙されていたふりをしてただけだよ。絶対」
私もそう思う。けどね、今それを言っちゃあだめなのだ。