読書生活 

本もときどき読みます

本のタイトル

 アゼルバイジャン共和国。この国についての知識といえば、南コーカサスにあること(南コーカサスがどこにあるかは知らない)と、美人が多いらしいこと(これも実はよく知らない)。

 アゼルバイジャン共和国、アゼルバイジャン共和国、アゼルバイジャン共和国…。ここまで読んでくれた方にはわかっていただけたかと思うのだが、そう、ゴロがいいのだ。3・4・5の日本語のリズムを美しく刻んでいる。母語が日本語ではないアゼルバイジャン共和国の人が、狙って国名をつけたわけではないのだが(多分)、日本語を使うわたしにはストンと入ってくる。

 中華人民共和国や南アフリカ共和国もそうだ。これも3・4・5のリズムを刻んでいる。当然今あげた国も母語が日本語ではないので、日本人に覚えてもらおうという意図をもって国の名前をつけたわけではないはず。

 3・4・5がやけに気になり、本棚の前で探してみた。結構あるかと思いきや、3冊だけだった。

「こんな夜更けにバナナかよ」

 重くなりがちな障害者の日常をポップに書いたスマッシュヒット作だ。大泉洋主演で映画化もされている。この作者は日本人だし、このタイトルは先のリズムを意識して作ったことだろう(無意識かもしれないが、結果的に日本語を母語として使う人間が持つ快に引き寄せられたということにしよう)。

「甘いお菓子は食べません」

 ちっとも内容を思い出せない。ネットで調べると、いろんな女が主人公の短編小説らしい。「もうセックスはしたくない」と夫から宣言された女。母になるか否かを考え続ける女。アルコール依存から脱することのみを目的に生きる女…。女女女って。どうしてこの本を買ったんだろう。

「大本営が震えた日」

 吉村昭の名作。真珠湾攻撃作戦命令書を乗せた飛行機が行方不明になり、軍事機密漏洩の大ピンチに文字通り大本営が震えるという話だ。いつか行きたい吉村昭記念館。都内の公民館の一角にあるらしい。

 意外と少ない。しかも「大本営が震えた日」は3・4・5とは言えないか。ということは実質3・4・5のタイトル本は、我が家には2冊だけ。こういうリズムが本のタイトルに使われそうなんだけどなあ。

 本のタイトルについて新しい発見があった。「○○の○○」というものが結構多い。「容疑者Xの献身」「若きウェルテルの悩み」「黄色い目の魚」「ある明治人の記録」「ゲーテとの対話」「ある町の高い煙突」「村上海賊の娘」「マークスの山」「聖女の救済」「蛍の森」「殺人の門」「死神の精度」「宇宙のあいさつ」「ナミヤ雑貨店の奇跡」「砂の器」「砂の女」「大地の子」「ゼロの焦点」「路傍の石」「忍びの国」「冬の鷹」「海の史劇」「深海の使者」「カラマーゾフの兄弟」「麒麟の翼」「中原の虹」まだまだある。「坂の上の雲」や「菜の花の沖」という「の」のダブル、「桜の森の満開の下」というトリプルも発見された。

 うちの本で1番短いタイトルは2音。夏目漱石の「門」と大岡昇平の「野火」。3音だとぐんと増える。司馬遼太郎の「峠」や小川洋子の「ことり」などだ。1音の本は聞いたことがない。あってもおかしくないと思うのだが…。何千もの葬式を執り行った坊さんのエッセイ「死」とか、どうしてそこから生えてくる?誰もが1本は育てている、おでこやのどぼとけなどの、ほんらい不毛地帯のはずのエリアからぴょろんと生える1本の毛を追ったノンフィクション「毛」などだ。

 わたしの本棚にある1番長いタイトル本は、歌野晶午の「葉桜の季節に君を思うということ」だ。20音。まだ未読。夏が終わるまでには読もうかな。