読書生活 

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困っている同僚と彼を囲む職場の環境について

うちの職場に4月に異動してきた同僚がいます。前の職場の上司から、「本当にヤバイ。気をつけろ」という端的かつ分かりやすい引き継ぎがあった人です。

彼は臨機応変に対応するといったことが苦手で、野球に例えると(わたしは未経験ですが)、相手が誰であろうと事前に用意した球を事前に用意した順番で投げます。相手はストレートに強いので変化球主体で組み立てようとか、インコース打ちが得意だからインコースはストライクゾーンに投げないようにしようとか、そういうのはありません。野村監督が最も嫌いなタイプの選手です。加えて、球が遅いのにランナーが出てもクイックで投げなかったりするので、時にワンアウトも取れずに10点取られたりします。普通、そこまで点を取られる前に交代するのですが、うちの職場に控えのピッチャーなどいません。

仕事の失敗は仕方ないのですが、それを上司に指摘されると職場の一室にこもり、椅子や机を蹴飛ばしたり(すごい音がする)、4畳ほどの狭い更衣室にこもり、試合を控えたボクサーのように、頭からタオルをかぶって小さい椅子にすわりこんだりします(ボクシングに例えているが、これも当然未経験)。声をかけてほしいアピールなのですがそれが過ぎます。30分くらい出てきません。更衣室はデスクのある部屋に直結しているので、彼が出て来たかどうかすぐ分かります。帰りたいけど更衣室には入りたくない。彼が優しい言葉をかけてもらうべく待っているからです。まるでサウナの我慢比べのようになります。

これで可愛げがあれば良いのですが、残念ながらありません。人のミスを感ずる嗅覚に優れ、同僚が客に電話口で謝ったり取引き先と口論したりしていると、電話後にすぐ「何かあったんですか」と体中から嬉しさを滲み出して聞きます。自分のミスの尻拭いをしてもらった同僚と顧客に謝罪している時に、その尻拭い作業をどれだけ自分が一生懸命やったか、その同僚の前で平然と顧客に語ります。

顧客からのクレームが多いので、上司と相談し彼の仕事量を減らすこととしました。彼を呼び、上司が事情を説明した後、わたしと一緒に彼のやりたい仕事と同僚に任せたい仕事の希望を話し合い、仕事の調整を図りました。 

すると、次の日の朝、彼から会社に電話がかかってきました。「手が震えて出社できない」と言います。「どうしたのだ」と聞くと、「仕事を○○さんに取られたのがショックで…」とのこと。君がそう希望したのではないか、と言うと黙りこむ。でも、いいのですよ。ゆっくり休みなさいよ、と伝えました。人生いろいろ、人それぞれです。みんなには、「体調を崩したらしい」と伝えておきました。

すると、その日の夜、体調が悪いはずの彼がひょっこり職場に現れました。「どうしたのだ(その日2度目のどうしたのだ)」と聞くと、「明日締め切りの仕事がまだ終わってなくて」と言います。その仕事は先方の都合で締め切りが延びたことを伝えると、「せっかく来たのに、そういうことなら連絡くださいよぉ〜っ」と笑いながら帰宅しました。彼が休んだ分の仕事をしてくれた同僚に対して一言もなく、です。 

当然ながら、1人また1人と彼から人が離れ、彼は職場で孤立していきます。最近では、彼が咳をすると「うつすなよ、迷惑だから早く帰れよ」「いても何もできないんだから」とつぶやかれ、多少のミスでも恫喝に近い指導を同僚から受けるようになりました。彼の前の席に座る同僚は、コロナ対策のために設置された透明なアクリル板に隙間なくスケジュール表を張り付け、彼と目を合わせないようにしています。

彼のような人間にも前向きに仕事に取り組めるような環境を作ったり、彼の隠れた能力を引き出したりすることが、わたしの仕事でもありますから、これは憂慮すべき事態です。

この状況を憂慮しているのはわたしだけではありません。彼女は彼のことを「ADHDではないか」と言い、あるサイトを見せてくれました。

headlines.yahoo.co.jp

ここにはADHDの特徴を以下のようにあげています。

  • 相手が何を考えているのか、どんな気持ちでいるのか想像することに困難さがある。   
  • 余計なことを言ってしまったり、もしくはストレートに言い過ぎることもある。 
  • 法則性や規則性のあるものを好み、その法則や規則が崩れると強いストレスを感じる。
  • 突然の予定変更を迫られて混乱する。                   
  •  思いつきで行動してしまったり、言わなくてもいいことをつい言ってしまったり、考えるより先に動いてしまうことがある。

などは、まさにビンゴです。

ここには出ていませんが、対処法としては、多くのサイトを見るに、

  • できないことよりもできることに着目する。
  • 強みに目を向ける。
  • 周囲が特性を理解する。

とあります。

上司は、彼を成長させようと週に一度個別に指導しています。わたしも参加させてもらいましたが、その個別指導とは、彼の欠点をあげ、「4月から、ちっとも成長できていない」と叱責する時間が1時間続くものでした。

その個別指導後、わたしは上司に言いました。この研修はあまり意味をなさないのではないか、彼は追い込まれており最悪自殺することだってあり得る、彼の特性を生かした職場づくりや適材適所の配置換えが効果的ではないか、と。

上司は、「彼のこの職場におけるよい特性をあげてみろ」とわたしに言いました。職場における彼のよさ…口ごもるわたしに、「彼を放置しておくと、同僚の負担が増す一方だ。さらに、彼は思ったことを相手の気持ちを考えずにずばずば言い職場の和を乱している。そんな彼の特性を周囲が理解してやらねばならないとは、きれいごとであり理想論だ」とわたしの提言を一蹴しました。

わたしは上司に、上司があと数か月で退職であることを匂わせながら、もし彼に何かあったら上司の管理責任を問われかねない、と言いました。実に狡猾な言い方ではありましたが、「管理責任」という部分に思いを巡らせたようです。

「彼の指導は任せたよ」と、上司はため息混じりでわたしに言いました。わたしは、わかりました、と答えて上司の部屋を出ましたが、よいアイデアは何もありません。さて、どうしたものか、と思案に暮れています。