生きる力が出る動画
録画リストにある動画を整理しようと一つずつチェックして見ていたら、不覚にも涙した、という話です。
番組は『2014FIFAワールドカップ総集編 We are one サッカーでひとつに』というNHKのものです。2014年7月14日放送とあります。
その番組では、何人かの選手やチームにスポットをあてています。ここでわたしが紹介したいのは、ブラジル代表のジュリオセザールというサッカー選手です。動画をあげようと思ったらYouTubeにありません(涙)。なので、実況解説をします。
ブラジル代表は、つねに世界一が求められているサッカー強豪国です。しかも今回はブラジル開催。負けるわけにはいきません。エースはあのネイマール。絶対勝つ!すべてをかけて勝つ!自らと国民のために!
無敗で予選リーグを勝ち上がったブラジル。決勝トーナメント一回戦の相手は、強豪をやぶり勢いにのるチリ。この試合、ネイマールは徹底的にマークされます。
自分は多くの国民に喜びを与えるという責任がある
という重圧がネイマールにかかり、思うようなプレーができなくなっていました。精神的にも肉体的にも追い詰められるネイマール。
試合は延長戦に突入するも決着はつかず、PK戦にもつれこみます。追い詰められたブラジル。ネイマールからチームの命運を託された男がいました。ジュリオセザール。ブラジル代表のGKです。
さあ、みなさん、ここからですよ。ここから彼の回想シーンに突入です。
ジュリオセザールって誰?
彼は4年前の屈辱を思い出していました。2010年南アフリカ大会準々決勝。ジュリオセザールがパンチングで防ごうと前に出ましたが、ボールに触れられず、そのままゴールに吸い込まれ…。GKの失敗は即失点につながります。ブラジルは0対1で敗北しました。試合終了直後、インタビューを受けた彼は、涙をこらえ気丈にこう答えます。
「責任は自分がとる。優勝すると信じていたので悲しい思いでいっぱいだ」
帰国後、厳しい批判にさらされました。代表に呼ばれなくなり、所属クラブからも去ることになります。失意のどん底とはまさにこのことです。
彼は、11歳の息子を相手に公園で練習します。NHKの番組にはこの映像もあるのです。みなさんにお見せできないのが本当に残念です。なぜない、YouTube(涙)。実況続けます。彼は、カナダなどのチームを点々としながらプレーを続けます。
地道にやっている人を神様は見捨てません。その努力と経験が認められ、代表に復帰することになりました。やった、やったぞ!
回想シーンおわり。先ほどのPK戦に戻ります。PK戦の前、彼の目には涙がありました。彼の脳裏には何が浮かんでいるのでしょう。
会場を埋め尽くすブラジル国民に両手をふり、自らの胸を何度もたたき鼓舞するジュリオセザール。
「止めたー!ジュリオセザール止めました!」
「止めたー!ジュリオセザールまた止めました!」
狂喜する観客。爆発寸前です。しかし、ブラジルも2本止めらPK戦は5人目に突入します。ブラジルの5人目はもちろんネイマール。ネイマールは外さない。決めて、ジュリオと強く抱き合います。さあ、ジュリオ、次はお前の番だ!(って何様?)。
「5人対5人のPK戦。チリが次を外せば、ブラジルベスト8進出です」
「外れたー!ブラジル勝ちました。苦しい状況を乗り越えて、壮絶なプレッシャーをはねのけました!」
チリの5人目のキッカーが蹴ったボールは、ポストに当たりはねかえります。チームメイトが歓喜の輪を作ります。その輪の中心にはもちろん彼の姿が。
試合後、待っていたのは、4年前と同じインタビュアーでした。
「PK戦の前から感情をあらわにしていましたが?」
ジュリオは空を見上げ、
「チームもなく練習もできなかった。つらい時期を思い出し、感情を抑えることができなかった」
しばし沈黙、そして…
「4年前、とても傷つき悲しかったときにインタビューを受けた。今あなたに再びインタビューされることになったが、今回は喜びでいっぱいだ」
真っ赤な目から溢れる涙。
「しかし、まだブラジル代表の戦いは終わっていない。仲間が支えてくれたおかげで最高のプレーができる」
最後に、
「優勝まであと3試合ある。また、あなたのインタビューを待っている」
しかし、次の試合、相手選手の膝が腰を直撃し、ネイマールは腰椎骨折の重傷を負います。ネイマール不在のブラジルは準決勝ではドイツに7対1という歴史的敗退を喫しました。スポーツはリアルです。このまま、勝たせてくれたらジュリオの物語は完全なものとなるのですが。
しかし、これこそ、欠けているからこそ完全なものなのかもしれません。
ドイツ戦後のジュリオのインタビューはYouTubeにありました。
彼の人柄がわかる動画がありました。おだやかな人ではありません。誠実で熱い人です。