読書生活 

本もときどき読みます

読書感想文と自由研究がなぜ必須の宿題なのか調べてみた。

やっつけで自由研究と読書感想文をすませる息子。 

 夏休み最後の土日、うちの子が自由研究に取り組んでいます。すりおろした大根やトマトを透明なコップに入れて、その中に臭い液体をスポイトで垂らしています。身の回りの食材にどれくらいビタミンCが含まれているか調べる実験なのだそうです。

 賢そうなことをしていると思いきや、家人曰く、この実験は中学生の自由研究の定番だそうで、ネットで検索したら一発で出てくるんだって。

 絶対にやらなければいけない宿題の一つで、理科の成績に少し反映されるとか。昨晩は読書感想文を仕上げたとのこと。

読書感想文と自由研究はいらないと思う。 

 なぜ、この自由研究が絶対にやらなければいけない宿題なのか理解に苦しみます。「必ず課す」ということは「それに触れる人数が増えたら同じようにそれに興味をもつ人数も増える」という発想から来ていると思うのですが、ピンとこないなあ。

 嫌なことを無理矢理やらせても嫌いになるだけですし、うちの子みたいにネットで検索してその通りにやってる全く頭を使わってない子どもも多いんじゃないかな。小学生の自由研究なんか、ほぼ親の作品なんてことになっている気がします。発想も作業も全部親、それでいて、小学生テイストを残さなきゃいけないからその匙加減も難しい。世の親御さんはきっと頷いてくださるはずです。

 読書感想文はもっといただけない。無理矢理本を読ませるだけじゃなく、それについての感想を書かせるってどういうこと?。夏休み前には課題図書が学年別に本屋に並びますが、毎年もやっとします。読んでない本の文句を言いたくはないのですが(だったら読めって言われそうですが、子ども向けの本って辛い)、どんな内容なんですかね?課題図書に選ばれる基準は何なのか?気持ち悪くないですか? 

読書感想文や自由研究を多くの学校が必須の宿題にするのはなぜか?

 学校が出さなきゃいいんだ!先生が宿題にするからだ!となりますよね。では、どうして学校はこれらを必須の宿題にするのでしょうか。わたし、学校の先生に知り合いがたくさんいましてリサーチしました。すると驚きの調査結果が。

 では、ここからわたしのリサーチ結果を公表します。

夏休み前に、多くの作文コンクールやポスター展の募集要項が各学校に送付される。 

 夏休みの前に、様々な団体が作文やポスターの募集要項を小中学校に送付します。「税の作文」や「〇〇ありがとう作文」や「選挙ポスター」などです。その中から学校の先生方は、夏休みの宿題を決めます(もちろん学校独自の宿題もあります)。

読書感想文を必須の宿題とする学校が多い理由 

 では、その募集要項のどれを必須の宿題にして、どれを希望者だけの宿題にするのか。

 その募集要項の中に、どの小中学校も参加せざるをえないコンクールがあります。それが「青少年読書感想文全国コンクール」です。サイトはこれです。 

www.dokusyokansoubun.jp

 主催は「全国学校図書館協議会」という団体です。この団体が学校に強烈なオシをもっています。しかも後援は、内閣府・文部科学省です。さらに今年で64回目です。

 みなさんの仕事にもありませんか?効果はよくわからないし、とても労力を費やすけれど(選んだ1点をそのまま出すのではなく、先生もその本を読み、推敲し、子どもにもう一度清書させなければいけません。しかも、それが第一次選考ですぐ落ちたりする。課題図書で1点、自由図書で1点ださなければいけない、という学校もあり、自由図書の場合、それこそなんでもありですから、その本を子どもから借りて読まなくてはいけません。もちろん推敲と清書もです)、やめるためにはそれ以上の労力がかかり(自分の学校の教員を納得させるだけでなく、校長会で審議してもらわなければならずなのだそう)だったらやる、という仕事が。読書感想文は学校にとってそれです。

 このサイトをひらけばわかるのですが、全国コンクールと言われているだけあって市町予選、地区予選、県予選、全国大会と選出された作文は勝ち上がり、一番の勝ち上がりには「内閣総理大臣賞」なるものが授与されます。

 このコンクールの審査員も学校の先生が行います。半世紀以上の歴史があり、学校の読書感想文の選定はもちろん、地区の選考会の審査も出張業務となっています。その地区予選に我が校の作文が一つもない、ということはあってはならない事態です。だから、読書感想文が必須の宿題になっているのだそうです。

 大きな市では、市全体の中で数点選んでコンクールに出品すればいいところもあるので、読書感想文が希望者だけの宿題になっている学校もあるようですが、小さめの市町では必須の学校が多そうです。

自由研究を必須の宿題とする学校が多い理由 

 自由研究にも、読書感想文コンクールのような全国規模のコンクールがあります。一番大きなコンクールは「自然科学観察コンクール」です。毎日新聞社主催で、後援は文部科学省です。

 ただ、このコンクールには読書感想文コンクールのような各学校に出品を強制するようなパワーはなぜかありません。では、どうして必須なのか?自由研究にも読書感想文コンクールのように出品を強制するようなものがあるのでしょうか。

 正解は「ある」です。各学校は、夏休み明けに各地域で開催される「自由研究展」(「理科展」とか「科学展」と言われている地域もあります)に作品を出品しなければいけません。これは誰でもご覧いただける展示会なので、一度足を運んでみてください。この展示会の搬入や搬出は学校の理科の先生の仕事となっています。ここに展示する作品がないという事態は避けなければなりません。そこで、自由研究を必須の宿題とする学校が多いのです。

どうして自由研究の展示会がさかんなのか?  

 自由研究の展示会が至る所で行われているのはなぜか。自由研究の誕生は戦後です。戦争後すぐの学習指導要領(学校の授業について、これを教えましょうということが事細かに書かれているものです。だいたい10年ごとに改訂されます)に、国語や算数、といった教科として「自由研究」という教科が誕生しました。戦時中の抑圧された時代の反動で、この「自由研究」の「自由」という言葉がはまったといわれています。ただ、10年後の学習指導要領で、この「自由研究」という教科は消えました。ただ、この「自由研究」の名残が今の「自由研究」として残っています。地域の展示会も同様です。

 「自由研究」という教科は、社会に強制させられることなく、社会に抑圧されることなく、自分の好きな事を自由に研究していいんだよ、という発想から生まれたもののようですが、その「自由研究」が今の小中学生に必須となっていることは皮肉ですね。自由な研究を絶対にやらなければいけない、ということになっています。 

 

 

 これをお読みになられた先生の中には反論等もあるでしょう。でも、このリサーチに頷く先生方も多いと思います。

 先生も大変です。先生方、親御さん、小中学生、今こそ立ち上がれ!声をあげましょう!自由研究と読書感想文を夏休みの宿題から追放する運動を開始しよう!って。今年はもう遅いので、来年の実施を目指して。