読書生活 

本もときどき読みます

座右の書を聞かれたらこの本をあげておけば間違いない

座右の書とは 

 「座右の書は何ですか?」と聞かれて困ったことはありませんか?そんなあなたにおすすめな本が『名人伝』です。『名人伝』を一読し、次に座右の書を聞かれたら、「中島敦の『名人伝』だよ」とどや顔で答えましょう。

『名人伝』中島敦 

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 『名人伝』という書名で売られていることはほとんどありません。中島敦の短編集『山月記・李陵』におさめられています。

 読書が苦手という方でも必ず読めます。長さは何と11ページです。立ち読みですますことすらできる短さです。

 「そんなに短くて大丈夫なの?」という声が聞こえてきそうですが、心配ありません。そこらの自己啓発本を何冊積み上げても、この11ページに勝てません。半世紀以上の歳月を経た今もなお衰えない名作です。

『名人伝』の簡単なストーリー 

 もともと短い話ですが、さらに要約するとこうなります。

弓の名人を志した若者が、想像を絶する鍛練ののちに神業と言える技術を身に付けることができた。名人となってもさらに鍛練を重ね、ついには弓矢を用いることなく、ひとにらみで鳥を射抜くことすらできるようになった。しかし、その技を誰にも見せることはなかった。最後には「弓矢」という道具すら忘れてしまった名人を見て、周囲は、「真の達人とはこういうものか」と驚いた。

詳しい内容はこちらをご覧ください。 

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林修先生の語る『名人伝』 

 林修先生がテレビでタモリさんと対談した時に、タモリさんを『名人伝の主人公のようだ』と評したと言います。

 林先生曰く、

 タモリさんも、若い頃は芸能界で生き残るために様々なお笑いの技術を身に付けようと努力なさったことでしょう。そして、ビック3と言われるようになった。今のタモリさんは、肩の力を抜きそれらの技術を使うことなく(使っているように見せることなく)多くの番組を軽やかにまわしているように見えます。いつかタモリさんは、『笑っていいとも』という番組のことすら忘れてしまうのではないでしょうか。

卓越した比喩です。さすが、林先生。 

林望先生の語る『名人伝』

  この『名人伝』、短いのですが少し言葉が難しい。漢文の読み下しのような部分もあります。でも、読む価値ありです。解説で作家の林望先生は『名人伝』をこのように言っています。 

 (難しいという点に対して)心配するには及ばぬ。必ずその一々には語注が付いているから、それを参照しながらスピードを出して読んでいくのがよい。テーマはなんだろうか、自分の人生と重ね合わせて考える点はなにか、などということは、すべて余計なことである。この快速な文章を舌頭に転がすつもりで、まっすぐに読み、あっという間に読み終わる。そうすると、なんとなくすーっとした気分があるであろう。それから次に『名人伝』などに読み進む。これはもう少し易しい。易しいし、第一おもしろい。

 わたしは、今までそこそこの量の本を読んできました。その本のたいていは忘れてしまっているのですが…。今まで自分が読んだ本の中で10冊選べと言われたら、この『名人伝』を入れます。選んだ10冊の中で、最も短くて、特別な知識が必要なく読める作品がこの『名人伝』です。よろしければどうぞ。 

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